COP27:ユースのエンパワーメントと科学に基づく市民参画について議論

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  • 2022年11月21日     シャルム・エル・シェイク

    2022年11月9日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)とユネスコは、エジプトのシャルム・エル・シェイクでの第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)にてサイドイベントを開催し、科学に基づく市民参画とユースのエンパワーメントがいかに気候行動に貢献できるか、について議論しました。

    開会挨拶で、ユネスコ水科学部門のアボウ・アマニ ディレクターは、あらゆる面で気候行動を推進するためには証拠に基づく意思決定が必要であることを強調し、気候科学をすべての人々にとってアクセスしやすいものとするよう呼びかけました。また、国連大学欧州事務所副学長で、国連大学欧州事務所副学長でもある国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)のシェン シャオメン所長は、市民の社会的な対話への参加によって科学がより強固なものになると同時に、ユースとの知識の共創こそがすべての人々にとって望ましい未来を設計する上で不可欠であると述べました。

    環境省の小野洋 地球環境審議官は、市民が自らのライフスタイルの選択と民主的プロセスを通じて気候行動に貢献するためには、アクセスしやすく、理解可能な科学的知識が必要であると述べました。

    東京大学総長特別補佐でもある同大学院工学系研究科の沖大幹教授は、基調講演で科学および科学技術は排出量の削減に不可欠であり、科学的知識はすべての市民にとって理解可能な形でアクセスしやすいものでなければならないことを強調しました。また、知識の交換にはグローバルな協力関係が必要であると述べ、水分野におけるレジリエンス(回復力)と持続可能性のための開かれた科学メカニズムを呼びかけました。

    パネルディスカッションは、ユネスコのアニル・ミシュラ セクションチーフの司会で行われました。ユネスコのプログラム・スペシャリストであるコーエン・ヴェルビスト氏は、南部アフリカの気候観測所が危機に瀕しているコミュニティを特定するのに役立ったことを説明し、地域コミュニティとの協働がいかに気候変動への適応的解決策を生み出すことができるかを述べました。UNU-IASの山口しのぶ所長は、持続可能な開発のための教育(ESD)に関する地域の拠点(RCEs)について紹介し、ナイジェリア、ウガンダ、米国のRCEが実施した気候教育プロジェクトに焦点を当てました。地域レベルでユースのエンパワーメントを図るこれらの革新的なアプローチは、社会の変革に影響をもたらす大きな可能性を秘めています。

    ユネスコの開かれた水科学と教育に関する議長でもある、ブリュッセル自由大学のアン・ヴァン・グリエンスヴェン氏は、水管理におけるオープン・サイエンスについて発表し、農業や生態系サービスの分野でいかに市民科学が拡大しているかを説明しました。ダカール大学地理学部のアワ・ニアン・ファール氏は、ジェンダーとユースのエンパワーメントに焦点を当て、若者たちが気候変動危機に対する認識と同時に、持続可能な開発がいかにこの問題への解決策となり得るかについての認識も深めつつあることを強調しました。

    ストックホルム環境研究所アフリカセンター長でもあるUNU-IAS評議会のフィリップ・オサノ議長は、気候行動メカニズムの一環として、教育を活用したスポーツにおける連携を紹介しました。スポーツ施設や高校に空気の質をチェックするセンサーを設置するなどの活動を行う取り組みは、気候モニタリング・プロジェクトへの若者やスポーツ団体の動員に効果をあげています。UNU-IAS評議員でありペンシルバニア大学環境イノベーション・イニシアチブのメリッサ・ブラウン・ゴッダール シニアディレクターによる発表では、学際的研究の推進と協働の創出を通じて持続可能な開発の課題に対処しているペンシルバニア大学の環境イノベーション・イニシアチブの取り組みが紹介されました。また、「世界大学気候フォーラム」が気候変動に関する地域プロジェクトの実施への学生の参画を進めていることも紹介され、若者たちがアイデアを実現するためのツールを提供する必要性が強調されました。

    UNU-IASのフィリップ・ヴォーター コンサルタントは、本セッションにおける主要なメッセージをまとめ、今回紹介された事例から、情報に基づく意思決定と科学に基づく行動を通じて、いかに市民が気候変動問題の解決に参画できるかが示されたと述べました。また、気候変動が人々に与える影響は多岐に渡っているため、時により脆弱な人々が脅かされたり、資源や組織のレベルが異なったりすることが強調されました。エンパワーメントのためのツールや取り組みを開発する際には、これらの要素が考慮されなければなりません。ヴォーター博士はまた、行動というテーマを強調し、実践的な行動を起こすために、世界中の市民が獲得した知識を活用することに関心を持ち、自分たちの生活の中で解決策を実行することが何よりも必要であると述べました。