ガーナにおけるコミュニティー・シアターによる研究成果の普及

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  • 2016年6月21日     ガーナ

    Photo: Yaw Agyeman Boafo

    Photo: Yaw Agyeman Boafo

    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)では、 国際共同研究プロジェクト「アフリカ半乾燥地域における気候・生態系変動の予測・影響評価と統合的レジリエンス強化戦略の構築(CECAR-Africa)」を実施しています。 気候・生態系変動への適応とレジリエンスの研究を主題とするこのプロジェクトでは、研究成果を現地の集落に普及する新たな試みとして、住民参加型演劇(コミュニティー・シアター)を行っています。

    この取り組みでは、演劇を通して、将来の気候変動に対する不確実性や現段階で考えられる適応策、コミュニティー内の関連する課題について、人々と共有し、議論するための基盤を形成できるようにしています。最終的には、研究成果に基づいて提案された適応策を現地の状況に応じた形で人々が自ら実行できるように、能力形成を促すことを目指しています。

    UNU-IASの齊藤修学術研究官とガーナ開発学大学のゴダナ・クラニャッツ=ベリサヴレヴィッチ教授の監修のもと、プロジェクトメンバーである東京大学のヤオ・アジマン・ボアフォ研究員がこの実践に携わり、プロジェクトが関わる10集落のうち5つの集落が選ばれました。この地域の気候・生態系変動について観測され、予測される科学的知見を使って、集落の現実に即して過去・現在・将来起こりうる状況を反映させることで、複数の演劇作品ができました。役者として参加した地域住民は、専門家の指導のもとリハーサルを行い、プロジェクトの成果と提案される適応策を理解しながら、演劇のシーンを即興で演じ、改良しつつ練習を重ねました。架空の登場人物を取り入れ、気候・生態系変動に対する各集落の脆弱性や適応能力を表現するストーリーが作られました。

    2016年4月29~30日、5月3~5日、各集落の住民とプロジェクト関係者の前で演劇が行われ、過去・現在・将来の状況に基づいて集落の暮らしの変化が演じられました。地域の視点で今後の議論を深めるため、実際に演じた役者や観客から意見や感想を集めると、その多くが肯定的なものでした。とくに女性を中心として、演劇は住民意見を集約し、表現する有効なものとして受け入れられました。また、演劇は楽しみつつ集落全体の一体感を高めるとともに、自分たちの生活様式や行動が環境問題に結びついていることを学ぶことができ、自然生態系に対する行動を変容させうることがわかりました。

    CECAR-Africaプロジェクトでは、今回試験的に行なわれたコミュニティー・シアターの実施過程や結果を分析し、今後他の集落でも実施する予定です。

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    UNU-IAS CECAR-Africaプロジェクトは、UNU-INRAおよび日本・ガーナの研究機関と共同で気候・生態系変動への適応とレジリエンス研究を実施し、統合的なレジリエンス強化戦略「ガーナモデル」の構築を目指しています。