地域の生物と文化の多様性をどう守るか、「いしかわ金沢モデル」で提案

ニュース
  • 2015年6月25日     石川県金沢市

    2015年5月28日、UNU-IASいしかわ・かなざわオペレーティングユニット(OUIK)は、国際シンポジウム「石川-金沢生物文化多様性圏 ー 豊かな自然と文化創造をつなぐいしかわ金沢モデル」を開催し、国内外から約150名が参加しました。

    冒頭の基調講演では、ユネスコと生物多様性条約事務局が共同で運営する「生物多様性と文化多様性をつなぐ共同プログラム」について紹介があり、生物多様性条約事務局のジョン・スコット氏とユネスコ側担当官のアナ・パーシック氏は、地域の文化と自然が人間の活動を介して影響を与えあう関係であることを述べ、生物多様性と文化多様性の包括的な保全の必要を提唱しました。両氏はまた、今年9月に国連総会で決議予定の持続可能な開発目標(SDGs)がより包括的な視点を持ち、人間中心の包括的なアプローチである生物文化多様性も、その重要な役割を担っていくと述べました。

    生物文化多様性に関するヨーロッパ地域会合で昨年採択された「フィレンツェ宣言」についても紹介がありました。同宣言では、都市部でも農村部でも生物多様性と文化多様性の豊かさが私たちの豊かな生活に貢献しているという前提のもと、生物文化多様性を包括的に議論する視点が政策決定プロセスやビジネスモデルで主流化される必要があることが提唱されています。これについて、フィレンツェ大学のマウロ・アニョレッティ准教授は、学術研究機関の役割として、生物多様性と文化多様性のつながりのメカニズムを学術的に検証することが、生物多様性と文化多様性の喪失に歯止めをかけ、文化政策と環境政策の融合につながると述べました。

    img-kanazawa-report

    さらに、金沢市の生物資源と伝統工芸の関係、豊かな自然と加賀藩による文化政策の賜物である石川の食文化、里山と健康に関する事例紹介についても報告されました。これを受けて敷田麻実教授(北海道大学)は、金沢の豊かな文化が周辺の里山里海との支えあいの関係から成り立っている点に注目し、資源消費型ではない、石川の自然が育まれるような文化創造と発展を目指す「いしかわ金沢モデル」を提案しました。

    この「いしかわ金沢モデル」については、パネルディスカッションで議論が続き、最後に渡辺綱男OUIK所長より総括として金沢メッセージが読み上げられました。同メッセージは、参加者から拍手をもって賛同が確認されました。

    OUIKでは今後も、石川、金沢の生物文化多様性保全を関係者と共同で推進し、国際的に発信するプラットフォームとなることを目指して活動を続けます。

    本シンポジウムの詳細な報告は、PDFでダウンロード頂けます。