2016年1月1日 東京
2016年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年本研究所は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、気候変動に関する新枠組の「パリ協定」、「仙台防災枠組2015-2030」の策定プロセスに貢献すべく研究活動を行って参りました。また11月には「2030アジェンダ」の実施をテーマとした国連大学40周年記念シンポジウムを開催しました。さらに昨年秋、天皇皇后両陛下が本学へ行幸啓になり、大学院修士・博士課程の学生とご懇談いただきました。この貴重な機会が学生たちには大きな励みとなり、大変有り難く感じております。私たちはこのような活動の実績を活かし 、新しい年においても、研究・政策開発・能力開発に関する活動をさらに発展させ、前進して参ります。
昨年10月に第2回評議会会合が開催され、本研究所の今後の研究教育活動を推し進めていくための指針となる戦略計画が承認されました。この計画は、私共の活動全体を引き続き支える骨子となる、サステイナビリティ学を強調した計画でもあります。またこの計画に沿って、学術的卓越性と政策志向型の研究を結びつけていくことにも力を注いでいきます。さらに国際社会における主要議題に取り組むための学際的な知識を生み出しながら、科学に基づいた知見を政策立案の過程に活かされるよう発信して参ります。具体的には次の3つの政策課程に重点を置き、新しい戦略計画を行動に移していきます。
第1の政策過程は、「2030アジェンダ」です。本研究所は、このアジェンダの実施のために必要な重層的な制度的構造や科学と政策とのつながりなどに関する研究を進めていきます。また、持続可能な開発目標(SDGs)に関する教育および知識生成を推進するとともに、持続可能な都市の水環境に関する政策ツールを開発します。
第2の政策過程は、生物多様性と生態系サービスです。「生物多様性を保全するための戦略計画2011-2020」の中核をなす生物多様性条約(CBD)の「愛知目標」の達成に向けた取り組みを続けて参ります。主に、国連加盟国の関連活動の実施を支援し、本研究所の世界的ネットワークを活用するなかで収集した事例の分析をもとに、政策提言を行います。また、「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」に関する国・地域・地球規模での科学的評価に寄与し、参加型シナリオ構築のための戦略を開発していきます。
第3の政策過程は、 気候変動および災害リスク軽減であり、低炭素技術の国際協力を推進し、アフリカの半乾燥地域において気候変動への適応のため統合的戦略を構築することにより、「パリ協定」の実施に寄与します。また、リスクコミュニケーションおよび災害後の復興プロセスに関する研究を通して、「仙台防災枠組」の実施にも貢献します。
大学院プログラムについては、既に大学院としての教育活動が定着しており、今後の更なる発展が期待できます。東京大学、上智大学、国際基督教大学(ICU)等の国内の主要大学との連携により、学生にはさまざまな研究や教育の機会が増えていきます。昨年7月には、8名の学生に修士の学位が授与されたことに加え、はじめてサステイナビリティ学の博士号が3名の学生に授与されたことは、特筆すべき出来事といえます。また本年からは、卒業生との繋がりを保つため卒業生ネットワークを構築し、研究のネットワークも広げていく予定です。これは、2015年3月に大学評価・学位授与機構(NIAD-UE)の第三者評価を受審し、同機構が定める基準をすべて満たしているとの評価を受けた際にも勧告された点です。
本研究所は、これらの優先課題に重点を置きながら、研究・政策開発・能力開発を通じて、持続可能な未来の構築に貢献できるよう尽力いたします。また、「2030アジェンダ」や「パリ協定」のように、国際社会における大きな課題に取り組む国際的プロセスを支援します。
最後に、UNU-IASを代表し、日頃より本研究所を支えて下さっている皆様へ深く感謝申し上げます。設立されてからの2年間で本研究所は大きく前進しましたが、皆様のご支援を励みに、 微力ながらさらなる発展と成功に向けて指揮を執って参ります。
2016年が皆様にとって素晴らしい、実り多き一年になることを祈念して年頭のご挨拶といたします。
2016年1月
UNU-IAS 所長
竹本和彦