所長からのごあいさつ

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  • 2017年1月30日     東京

    takemoto-bw-150 国際社会は、2015年に国際合意をみた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」および「パリ協定」の実施に移っています。こうした動きが加速する中、UNU-IASは、学際的な科学の知識を生み出し、科学に基づく知見を政策立案の過程に活かされるよう発信することで、これまでにないほど重要な役割を果たしていく所存です。

    UNU-IASは2016年、「2030アジェンダ」や「パリ協定」のほか、多くの国際的な政策課題に対して重要な貢献をしてきました。私どもの「持続可能な開発のためのガバナンス」研究チームは、「持続可能な開発におけるハイレベル政治フォーラム(HLPF)」や2016年度版の「持続可能な開発レポート」の起草など、国連の専門家による議論の場に、さまざまな情報を提供するなど貢献してきました。本研究所ではまた、地球規模の目標達成に向けて、専門家が考えや見識を市民と共有するイベント「SDGダイアログ・シリーズ」を始めました。

    アフリカでは、数多くのプロジェクトやパートナーシップを通じた研究、能力向上活動が実施され、持続可能性の推進に寄与しました。昨年8月、ケニアの首都ナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)では、アフリカ地域全体から120名にもおよぶ若手起業家や研究者が参加したフォーラムを含む、計4つのサイドイベントを開催しました。

    昨年10月、エクアドルの首都キトで開催された第三回国連人間居住会議(ハビタット3)においても、UNU-IASは「ニュー・アーバン・アジェンダ」の枠組みで水環境とレジリエンスの問題について議論を進めるなど、積極的に活動しました。

    また、「生物多様性を保全するための戦略計画2011-2020」の中核をなす生物多様性条約(CBD)の「愛知目標」の達成を目指し、国連加盟国・地域コミュニティー・CBD事務局と協働しました。10月には、石川県七尾市で第1回生物文化多様性国際会議を開催し、生物多様性と文化多様性のつながりについての議論を踏まえ、石川宣言が採択されました。

    2017年の優先課題

    UNU-IASでは、次の3つの国際的な政策課題に重点を置き、取り組んでまいります。

    第1の政策課題は、「2030アジェンダ」です。SDGsを地域レベルで実現するための研究を実施していきます。また、アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)やその他のパートナーとともに、国・世界レベルの取り組みを連携するような仕組みづくりにも尽力します。アジアにおいて、国レベルですでに行われている事例研究をさらに進め、他の地域にも広げていきます。新たな局面を迎える「アフリカの持続可能な開発のための教育(ESDA)」プロジェクトは、アフリカ開発銀行の支援を受け、持続可能な産業化のための起業に力を入れてまいります。

    第2の政策課題は、生物多様性および生態系サービスの持続可能な活用です。UNU-IASでは引き続き研究と能力開発を進めます。政策立案の過程に生かされるような未来予測シナリオの発信に関しては、フューチャー・アースによる地球規模での研究や、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」への貢献を通じて、国際的な協力関係をより強固なものにしていきます。

    第3の政策課題は、気候変動および災害リスクの軽減です。UNU-IASでは、途上国のニーズや各都市によって異なる取り組みに焦点を合わせた国際的な低炭素技術移転に関する研究を行い、「パリ協定」の実施に寄与していきます。都市のレジリエンス構築や、洪水やその他、水に関係する課題についても、革新的なアプローチで研究を進めてまいります。

    大学院プログラムについては、学生たちが持続可能性の課題について独自の視点を身に着けられるよう、新たな機会の提供の一環として、国内外の優れた大学との連携をさらに強化していきます。

    本研究所は、これらの取り組みや活動を通じて、地球規模での目標達成と持続可能性の推進のために、重要な貢献ができるよう力を注いでまいります。

    最後に、UNU-IASを代表して日ごろから本研究所を支えてくださる皆様に、お礼を申し上げます。また、所内の活動に献身的に取り組む所員・フェロー・学生たちにも感謝します。本研究所のさらなる発展と成功のために活動していく所存ですので、皆様方のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

    2017年が皆様にとって実り多き一年となることを祈念して、年頭のあいさつとさせていただきます。

    2017年1月
    UNU-IAS所長
    竹本和彦