所長からのご挨拶

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  • 2015年2月6日     東京

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    2014年を振り返り、2015年を展望する

    本年は、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)が活動2年目に入ります。昨年の成果を基盤として、国際的な政策決定や国連システムにおける議論へより積極的に貢献するために前進し、行動を起こす年となります。

    2014年の概括

    昨年は、私共にとって移行の年でした。しかし、同時にUNU-IASは極めて重要な国際的な課題に取り組むことができました。具体的には、「持続可能な開発のためのガバナンス」プロジェクトは、新しいポリシーブリーフシリーズを通して研究成果をポスト2015年開発アジェンダに関する議論や政策立案過程に貢献しました。同ポリシーブリーフシリーズは、5月にニューヨークの国連本部にて開催されたフォーラムで発表され、国際的な議論の場にて広く発信することができ、また10月には、持続可能性とポスト2015年開発アジェンダに関するシンポジウムを開催し、ジェフリー・サックス教授をお迎えしました。翌月には、チャバ・コロシ大使(持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループ共同議長)をはじめ著名な専門家を招聘し、持続可能な開発目標(SDGs)における科学の役割りに焦点をあてて議論を深めました。

    また本研究所はこの1年で、第6回世界国立公園会議や、持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議、生物多様性条約(CBD)第12回締約国会議などの国際舞台において率先して活動して参りました。さらに、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープにおけるレジリエンス指標に関する貴重なツールキットを開発することにより、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の更なる発展に貢献してきました。

    教育面においては、9月より修士7名、博士3名の学生を受け入れ、新たに編成したカリキュラムの下で、サステイナビリティ学の大学院プログラムを実施しています。

    更に本研究所の最初の評議員として、国際的に活躍されている専門家4名をお迎えしました。11月に開催された第1回UNU-IAS評議会での議論を通じ賜りました貴重なご助言を私共の進むべき将来の活動方針に反映させていきたいと思います。

    2015年の抱負

    2015年を迎え、私共は、持続可能なグローバル未来の構築において不可欠であり、国際的なアジェンダとして重視されている政策プロセスに焦点を当てて、活動を展開していきたいと思います。

    まず第一に2015年9月にニューヨークの国連本部にて開催される持続可能な開発に関するサミットに向けて展開されている「ポスト2015年開発アジェンダの構築への取り組み」です。これまでUNU-IASは、SDGsのためのガバナンスのあり方について重点的な研究を進めて参りましたが、今年からはSDGsの実施メカニズムのほか、モニタリングや評価のあり方に関する研究テーマも加え、研究の視野を広げていく方針です。

    次にCBDとIPBESを含む「生物多様性及び生態系サービス」です。国際的なネットワーク及びパートナーシップを活用し、UNU-IASの研究、政策開発及び能力開発活動は、このプロセスへの取り組みを強化させていくこととしています。

    更に「気候変動適応及び災害リスク低減(DRR)」です。2015年3月に仙台市にて開催される第3回国連世界防災会議に向けた政策議論に積極的に参加し、UNU-IASのDRR関連研究の成果を発信していく方針です。

    全ての活動において、本研究所が位置するアジアという立地を生かすと同時に、常にグローバルな視野を持ち、国連システムのメンバーでありながら学術機関でもある私共の特有な立場を駆使することを目指します。

    また教育の領域では、国内外の主要大学との連携を強化することにより、本研究所の大学院プログラムをより発展させるとともに所内の研究と教育プログラムの繋がりに重点を置き、学生が実践的な経験を得られる機会を提供することなどにより、研究プログラムの範囲と能力の一層の拡充を図っていく方針です。

    行動へ移る2015年

    このような優先順位が2015年における本研究所の研究、能力開発、教育活動の方向性及び目標の道しるべとなり、私共は地球の持続可能性において困難かつ喫緊である課題に対応し、重要な貢献をするため、一層の努力を尽くして参ります。

    最後に、UNU-IASを代表し、本研究所の全ての友人、協力者、支援者の皆様へ深く感謝申し上げます。皆様のご支援を受けて、私共は行動に移り、2015年がUNU-IASにとって更なる成長と成功の1年になることを確信しております。

    2015年2月
    UNU-IAS 所長
    竹本和彦