国際生物多様性の日シンポジウムで自然共生社会に向けた協働的行動を推進

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  • 2023年5月25日     東京

    2023年5月15日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、国際生物多様性の日を記念し、「『合意』を『実行』に。生物多様性を取り戻そう。」をテーマとしたシンポジウムを共催しました。本イベントでは、2030年までに少なくとも地球の生態系の30%を保全するという歴史的な国際合意となった「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の達成に向けた国内外の取り組みに焦点が当てられました。本シンポジウムは、環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)、日本自然保護協会(NACS-J)との共催、および2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)の後援、生物多様性条約(CBD)事務局の協力を得て実施されました。

    冒頭、主催者挨拶で登壇した山田美樹環境副大臣は、新たな「生物多様性国家戦略2023-2030」の策定や、里地里山や企業緑地などを「保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECMs)」の推進につながる「自然共生サイト」として認定する制度など、同生物多様性枠組(GBF)における「30by30目標」の達成に向けた、日本の決意を強調しました。

    続いて、国連大学のチリツィ・マルワラ学長は、UNU-IASが事務局を務めるSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)や若者の生物多様性アートチャレンジThink7 (T7)の一環として作成された政策提言など、 国際社会が直面しているさまざまな課題に対するUNU-IASの取り組みを紹介しました。また、生物多様性、気候変動、SDGsに関するシナジーを最大化して全社会的アプローチを実施していくことの重要性を強調しました。

    基調講演では、CBD事務局のデイビッド・クーパー局長代理が、生物多様性の主流化に向けた日本のリーダーシップに感謝の意を表しました。また、新たに採択された国際枠組の達成にはさまざまな課題があるが達成可能である、として参加者たちに、あらゆるレベルにおいて全ての分野から生物多様性を保全するための行動を起こしてほしい、と呼びかけました。

    公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の理事長でもある、J-GBFの武内和彦会長代理は、日本の新たな生物多様性国家戦略について概説し、民間企業や若者といった多様なステークホルダー間の協働に重点を置いていると述べました。また、IPSIの取り組みについて、世界のOECMsの推進や、気候変動、生物多様性、砂漠化防止、SDGs達成に向けた統合的な解決策を前進させる取り組みだとしてその有効性を強調しました。

    その後の発表セッションでは、生物多様性保全のための知見と優良事例が共有されました。UNU-IASのウッパラット・コーワタナサクン コンサルタントは、UNU-IASが共同議長を務めたT7タスクフォースが作成したイシューペーパーでの提言に沿って、シナジーを産むようなアプローチの重要性および整合性のある政策の必要性を強調しました。持続可能な開発のための教育(ESD)に関する地域の拠点(RCE)トンヨン教育セクターのウンジ・リー氏は、韓国のセジャトラの森でのエコ・スタディーツアーを、地域の生物多様性行動を拡大し、市民の関心を高める協働的な取り組みの例として紹介しました。三菱地所株式会社サステナビリティ推進部の大須賀章記ユニットリーダーは、サステナビリティを基本方針の1つとして位置付けている自社の長期経営戦略に触れ、日本自然保護協会および、みなかみ町と連携して実施するプロジェクトを紹介しました。一般社団法人MITの吉野元代表理事は、多様なステークホルダーのパートナーシップの重要性を強調し、対馬ヤマネコとの共生を目指した、地域の持続可能な米づくりを推進するプロジェクトを紹介しました。


    GEOCの星野智子氏がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、国際的な政策と地域での行動をいかにつなぐべきか、また政策立案に若者など多様なステークホルダーを参画させる方法が模索されました。UNU-IASのスニータ・スブラマニアン リサーチフェローは、国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15)と第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)という2つのCOPに参加した経験から、このような国際会議を抜本的な変革を起こすきっかけとすることの重要性を強調しました。

    最後に、UNU-IASの山口しのぶ所長は、自然の喪失を止め、流れを反転させるとともに人間と地球の持続可能な未来を守るためには、世代を超えて学際的かつ分野横断的なアプローチを行うことが必要である、と強調してシンポジウムを締め括りました。

    本イベントでのプレゼンテーション資料のいくつかは、関連ファイルタブからご利用いただけます。

     

  • 吉野元氏プレゼンテーション「多様な主体が共創するための “土着型”コーディネーター(触媒)の役割 〜対馬の森里海の生物多様性の保全活動を例に〜」」

    (9.4 MB PDF)

    大須賀章記氏プレゼンテーション「三菱地所の生物多様性保全の取組」

    (3.4 MB PDF)

    ウッパラット・コーワタナサクン博士プレゼンテーション「公正な移行を通じた持続可能な開発目標とパリ協定の達成 - G7の役割 」

    (1.3 MB PDF)