2024年12月23日 東京
Photo: UNU-IAS/Tomoyo Tanno
2024年12月14日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)はイベントを開催し、ユースが政策決定に参画するための課題やそれを可能にするための仕組みについて議論しました。本イベントには、Global Youth MIDORI platform(GYM)プログラムより生物多様性条約第16回締約国会議(CBD COP16)に参加した大学生といしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の人材育成事業を通じて国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCCC COP29)に参加した高校生も参加しました。
冒頭挨拶でUNU-IAS山口しのぶ所長は、2024年9月の国連未来サミットで採択された未来のための協定を取り上げ、国連とそのすべての加盟国がユースの意味のある参画に向けた行動を強化していくことが決定されたことを紹介しました。また、この決定に先駆けてUNU-IASでは、公益財団法人イオン環境財団と共同で実施するGlobal Youth MIDORI platform(GYM)やOUIKの高校生を対象とした人材育成プログラムを立ち上げ、意味あるユースの参画に向けた取り組みを進めていると強調しました。
前半のセッションでは、GYMを通じてCOP16に参加した石黒平氏(東京大学大学院)と伊藤志帆氏(国際教養大学)が参加報告を行いました。石黒氏は、生物多様性保全の問題が住民の生活に直結していることを目の当たりにし、途上国からの怒りや社会的不平等に対する声が多く聞こえたことが印象的だったと述べました。伊藤氏は、UNFCC COP29に各国の首脳が多く参画しメディアに取り上げられていたのに対し、CBD COP16は先進国の首脳の参画が少なく違いが目立ったと指摘しました。
続いて、OUIKの人材育成プログラムを通じてUNFCC-COP29に参加した梶夏菜子氏(石川県立金沢泉丘高等学校)と本多真理氏(金沢大学附属高等学校)が参加報告を行いました。梶氏は、環境問題は紛争などを含め様々な方面からのアプローチが必要であり、一つの問題に取り組むことで別の問題の解決にも繋がっていく可能性を実感したと述べました。本多氏は、途上国が現状を訴えている一方、先進国は自国の先進技術を強調する場面が多く、双方の間に大きなギャップを感じたと話しました。
また、UNU-IASのユース支援事業の運営側からの視点も共有されました。GYMを担当した丸山鳴プログラムコーディネーターは、事業実施にあたり組織内の事務システムがそもそもユースの参加に則していない例が多く、他組織でも同様の課題が挙げられていると指摘しました。また、OUIKの富田揚子プログラムコーディネーターは、今回のプログラムで出た具体的な解決策や戦略的な提案を実行できるよう今後も伴走していきたいと述べました。
続いてのセッションでは、UNU-IAS竹本明生プログラムヘッドがモデレーターを務め、卒業後の活動の継続、就職でのユース活動の経験の活用、企業連携、交渉スキルおよび世代間、分野間連携について議論を行いました。
就職でのユース活動の経験について、馬淵裕平氏(金沢大学)は、就職活動の際に就活生が自身の環境活動について言及する際に慎重になる傾向があると指摘しました。また、富田凜太郎氏(Climate Youth Japan)は、環境活動も受け入れている企業が情報発信を強化する必要性を訴えました。豊島亮氏(一般社団法人 Change Our Next Decade理事)は、卒業後の活動継続について一般的には就職後の活動は時間的制約があり難しいと話しました。しかしながら、海外のユース団体は社会人ユースも多く、日本でも社会人ユースのニーズに応えることが重要だと強調しました。
また、世代間連携について、江口健介氏(地球環境パートナーシッププラザ(GEOC))は、「支援」という一方向的な取り組みではなく、異なる世代でも共通の目的・思惑のある双方向の取組を行うことが重要であると話しました。森井悠里香氏(Japan Youth Platform for Sustainability (JYPS))は、日本の制度としてユースの参画が不足している現状を訴え、資金提供など根本的な制度整備の必要性を強調しました。さらに、JYPSの本行紅美子氏は、ユースの中でも知識の差も大きいことからUNU-IASの行うオーダーメイドのような支援事業の重要性を強調しました。
竹本プログラムヘッドは、可能な限り早い段階でユースが関与することの重要性を強調しました。また、どの年代であっても役割があるため、UNU-IASやGYMのような場が、ユースに機会を提供し活躍を支援する役割を担う必要があると述べました。
最後に公益財団法人イオン環境財団の吉永園氏が、議論を振り返り閉会の挨拶を行いました。吉永氏は、理想と現実のギャップは財団の活動でも実感してきた課題であり、企業側の課題としてしっかり取り組んでいきたいと話しイベントを締めくくりました。
本イベントは、UNU-IAS、公益財団法人イオン環境財団および地球環境パートナーシッププラザとの共催で行われました。