気候とSDGsのシナジー強化に関する国際会議にて公正な移行を野心的に進めることを議論

,

ニュース
  • 2023年8月1日     ニューヨーク

     

    2023年7月16日、ニューヨークの国連本部にて第4回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議が開催され、世界のリーダーや専門家、オンライン参加者約4,000人が参加しました。本会議では気候変動とSDGsという2つの重要課題を同時的に進展させるための公正で公平な気候緩和的移行や適応への道筋についてのアプローチや進捗状況について議論が行われました。国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、公正な移行と統合的な解決に焦点を当てたエビデンスに基づいた専門的知見を提供しました。

    本会議は、国連経済社会局(UNDESA)と国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が主催し、「国連持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム」(7月10~19日、ニューヨーク)の関連イベントとして開催されました。

    UNU-IASの山口しのぶ所長は「公正で公平なネットゼロ変革―正しくなされるためには?」がテーマのパラレルセッションに専門家として登壇し、経済、エネルギー安全保障、グローバルヘルス、教育など、相互に関連した喫緊の課題を解決するためには、統括的かつ環境的に持続可能な解決策が不可欠であると強調しました。

    また山口所長は、最近発行されたUNU-IASのポリシーブリーフを踏まえ、政策立案者に対し(i)気候変動とSDGsの取り組みを社会保障施策と統合すること、(ii)包摂性を財政戦略の中心に据えること、(iii)公正な移行、環境の持続可能性、ウェルビーイングを測定するための一貫した仕組みの開発に早急に取り組むことを促しました。そしてSDGsが掲げる全ての目標の達成に向けた重要となる教育の役割を強調したほか、気候変動対策を強化する取り組みの中心に能力開発やトレーニングを据えるよう呼びかけました。UNU-IASの大学院 では、2023年9月に開講するパリ協定専攻を通じて体系的な能力育成を推進します。

    セッションの議論では、シナジー(相乗)効果を高めるための重要な要素として、政府内の縦割りを解消し橋渡しを行う包摂的な意思決定と科学アドバイザーの必要性が指摘されました。また、登壇者らはGDP(国内総生産)に代わる新たな指標の必要性を強調しました。

    本セッションの前に実施された開会の言葉では、閣僚、高官、国連機関のトップ、そして企業、学界、市民社会など、様々なステークホルダーが登壇しました。参加者らは、相乗効果のある行動の必要性を認識し、2023年に予定されているSDGサミット(9月18日~19日)、気候野心サミット(Climate Ambition Summit:9月20日)、国連気候変動枠組条約締約国会議(UN Climate Change Conference:11月30日~12月12日)などを含む重要な会議を意欲的に呼びかけました。さらに、公正な移行の原則が、気候変動とSDGsに関する統合的な取り組みの中核をなすべきであることも確認されました。

    他の2つのパラレルセッションでは、社会的および経済的変革のための気候変動対策(パラレルセッション2)と、資金とパートナーシップの活用(パラレルセッション3)をテーマに議論が行われました。閉会セッションでは、各セッションの主な成果がまとめられ、参加型の政策立案、全ての人に恩恵をもたらす公正な移行へのプロセス、そして「誰一人取り残さない」という理念の重要性を強調しました。また会議の参加者に対して、組織の縦割りを解消し協力関係を強化することが奨励されました。

    録画

    各セッションのアーカイブ映像は、以下のUN WebTVリンクからご視聴いただけます:

    会議概要

    本会議概要は、共同開催者であるUNDESAとUNFCCC事務局が作成しました。

    背景

    本イベントは、過去3回行われたパリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議の成果を踏まえて開催されたものです。第1回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議は、2019年4月にコペンハーゲンで開催され、第2回は2020年5月から6月にかけて3つのオンラインイベントからなる国際的なシナジー強化についての対話の機会として行われました。第3回気候とシナジー強化に関する国際会議 は、2022年7月に東京の国連大学で開催され、約2,000人を超える政治家や専門家が一堂に会し世界各地からの知見、優良事例、双利的となる解決策が共有されました。UNU-IASは第3回会合において、パラレルセッションやサイドイベントを開催したほか、若者主導の取り組みを拡大することを目的に、高校生を対象としたワークショップを開催しました。