COP26サイドイベントにて、カーボンニュートラルとSDGsの達成に向けて議論

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  • 2021年11月11日     グラスゴー&オンライン


    UNU-IASは2021年11月4日、第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26においてサイドイベント「カーボンニュートラルとSDGs-国連大学フォーラム」を開催し、2050年までのカーボンニュートラル(脱炭素化)とSDGsの達成に向けた課題や好事例について専門家との意見交換を行いました。本イベントは、英国・グラスゴーでCOP26の会場に設けられたジャパンパビリオンにおいて、一般社団法人海外環境協力センター (OECC)とともに開催したものです。

    参加者は、あらゆる分野・主体による抜本的な取り組みが不可欠なカーボンニュートラルへの変革の社会的側面について議論するとともに、気候変動に関するパリ協定の実施において教育や能力開発が果たす役割についても議論しました。

    また、UNU-IASにおいて大学院学位プログラムにパリ協定専攻を創設する新たな試みについても意見交換が行われました。この専攻は、世界各国からの学生や専門家に対し、パリ協定の実施において指導的役割を果たすためのスキルと知識を養成するもので、2010年に設置されたUNU-IASの大学院学位プログラムに新たに創設し、2023年秋の開講を目指します。

    開会挨拶で、UNU-IASの山口しのぶ所長は、カーボンニュートラルへの抜本的な社会・経済の変革において「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という2030アジェンダの理念を確実に実行することの重要性を強調しました。また、この変革において教育が果たす役割の重要性を強調し、国連組織で初となる新専攻創設の計画を発表しました。

    このUNU-IASの取り組みについて、環境省の正田寛地球環境審議官は、環境省が行ってきた気候緩和策へのキャパシティ・ビルディングなどの取り組みの効果をさらに高めるものであり、高く評価すると述べました。

    ビデオメッセージを寄せたOECCの竹本和彦理事長は、トレードオフの影響を抑えながらカーボンニュートラルで強靭な社会を実現するために、統合的なアプローチによりあらゆる行動をとることが重要であると強調しました。

    次に、UNU-IASの竹本明生プログラムヘッドが本フォーラムの趣旨説明を行いました。カーボンニュートラルは大規模な投資とイノベーションを通じて経済成長、雇用促進や防災など様々な社会的なコベネフィット(一つの対策が複数の利益につながること)を生み出す一方、急速な社会変革の過程で、低所得世帯がクリーンエネルギーにアクセスできないなどのトレードオフも発生しており、カーボンニュートラル実現のためには包摂性(inclusiveness)を組み込んだ取り組みが必要になると述べました。

    パネルディスカッションでは、モデレーターの竹本明生から、趣旨説明を踏まえ、カーボンニュートラルとSDGsの相乗効果を最大化するために必要な対策や仕組みについて議論を行いました。パネリストからは、太陽光・風力発電投資やバイオ燃料利用など地域の経済成長や雇用創出など社会的発展にコベネフィットをもたらすものであり、これらの取り組みを通じて社会的公正性が促進されること、このような視点から脱炭素対策における地域コミュニティの重要性が強調されました。また、脱炭素対策に関する影響評価、脱炭素投資分野の重点化、脱炭素対策のための人材育成や組織強化などの能力開発が必要であるとのコメントがありました。

    二つ目のパネルディスカッションでは、UNU-IASのジョンウィ・パクアカデミックプログラムオフィサーがモデレーターを務め、パリ協定の実施における教育の役割や、組織間のさらなる連携について意見交換を行いました。パネリストは、UNU-IASの大学院パリ協定専攻創設の計画について、学生が実務的かつ分野横断的なアプローチで学ぶ貴重な機会となるとして歓迎しました。新専攻では、パリ協定の実施に携わる実務者の指導により学生が実際のプロジェクトに関わったり、大学や研究機関を含む他組織との研究ネットワークを構築したりすることになります。

    最後に山口所長は、前向きな議論により、カーボンニュートラルで持続可能な世界に向けたグローバルな取り組みに対して価値ある寄与がなされたことを感謝するとともに、新しい専攻の検討・開始に向けたさらなる連携に期待する、としてセミナーを総括しました。