COP28:気候とSDGのシナジーを通じた公正な移行を議論

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  • 2023年12月13日     ドバイ

    Photo: UNU-IAS

    2023年12月2日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、アラブ首長国連邦、ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC COP28)のSDGパビリオンにて「気候変動対策と持続可能な開発のシナジー:公正な移行への貢献」をテーマとしたサイドイベントを開催しました。本イベントでは、2023年4月に開催されたThink7サミットにおける成果を踏まえ、政策の一貫性を確保するための実務的なアプローチについて話し合いました。政府、国連機関、市民セクターおよびシンクタンクから専門家を招き、特にエネルギーと食料システムについて議論が行われました。

    開会挨拶で国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)Edeltraud Guenther所長は、気候目標を達成するための方法、クリーンエネルギーおよび気候ファイナンス等COP28で議論された主要課題に取り組むには、統合的な解決策が必要であることを強調しました。インドネシア共和国環境林業省Alue Dohong 副大臣は、インドネシアの気候変動に関する取り組みを紹介し、ゼロカーボンの実現にはセクター横断の統合的な取り組みや、知見とリソースの共有が必要であると強調しました。

    UNU-IAS竹本明生プログラムヘッドは、Think7 Japanサミットにおける成果を共有し、急速なエネルギーの移行による社会の変容がもたらしうる脆弱性の拡大と格差の固定化が主要課題であることを指摘しました。また、気候変動対策とSDGsの取り組みのトレードオフ(両立不可能性)の例として、重要鉱物の需要の拡大がもたらす生産地での水質汚染、生物多様性や労働環境への影響について言及しました。

    竹本明生プログラムヘッドがモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、アフリカ、アジアおよび欧州の知見や、様々なセクターにおけるSDGsの社会的要因の相互関連について紹介しました。Fatima Denton国連大学アフリカ自然資源研究所(UNU-INRA)所長、IPCC WG2副議長は、以下のようにコメントしました。今後天然ガス等へのエネルギー需要が急増するアフリカにてカーボンニュートラルへ移行することにより、化石資源の輸出が国家の主要な収入源となっている国々では化石資源が座礁資産となり、国家の経済成長が妨げられる懸念があります。国際協力機構(JICA) サステナビリティ推進室(気候変動、自然)三戸森宏治副室長は、気候とSDGsのシナジーを促進するJICAの取り組みを紹介し、開発における気候変動レジリエンスを強化しSDGsの先を見据えることの必要性を強調しました。

    ストックホルム環境研究所アフリカセンターフィリップ・オサノ所長は、アフリカの持続可能な食料システムについて、気候変動の影響に強靭な農業のための技術移転を進め生産性を向上させることが重要であると話しました。加えて、フードロスなど食料廃棄削減の推進や、そのための投資の増大が必須である点を指摘しました。欧州経済社会評議会エリック・ポンシュー農業・地域開発と環境担当元ユニット長は、EUにおける持続可能な食料政策であるFarm to Folk戦略に関する知見から、食とエネルギー移行の関連性および共通点について説明し、EU域内で生産される食料のみならず今後はEUの輸入元の食料生産に伴う温室効果ガス排出や森林破壊の減少などに取り組む必要があるとコメントしました。国際連合経済社会局高田実 チームリーダー(エネルギー)は、2022年に国連大学にて開催されたパリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議を含む気候変動対策とSDGsのシナジーに関するこれまでの国際政策の進展を共有し、統合的な取り組みの効果のエビデンスとなる研究の促進、およびシナジーを実現するうえでの公正と公平の重要性を強調しました。