COP28の成果と今後の人材育成について議論

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  • 2024年1月15日     東京

    2023年12月15日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は「COP28報告会:パリ協定実施のための人材育成」を開催しました。本報告会では、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(UNFCCC COP28)の最新動向やパリ協定の実施に向けた能力構築の現状、ギャップおよびニーズを特定するとともに、UNU-IASの大学院学位プログラムの下で2023年9月に開設されたパリ協定特修コースの今後や、気候変動に関する政策立案プロセスへのユースの意味ある参画について議論を行いました。

    冒頭、主催者挨拶で登壇したUNU-IAS山口しのぶ所長は、パリ協定の目標達成を妨げる要因の一つが知識とスキルの不足であることを指摘しました。その上で、教育を通じて気候変動に対処するための能力を社会全体で早急に構築し、強化することの必要性を強調しました。また、UNU-IASが実施する革新的な教育と能力構築プログラムの一例として、COP28において今年UNU-IASが開始した大学院パリ協定特修コースをスケールアップさせるプランを発表し、これらの取組みを通じて各国の気候政策をリードする専門家の育成に貢献していくと話しました。

    続いて行われた基調講演では気候変動に関する政府間パネル(IPCC)前議長、カーボンフリーエネルギー 特任大使、カーボンフリーアライアンス 会長のホーセン・リー氏が登壇し、COP28において全締約国が石炭のみならず全ての化石燃料からの脱却を進めることに合意したことが大きな成果であったと紹介しました。この合意内容は先のIPCC第6次報告書の評価結果とも整合するものです。ホーセン・リー氏は引き続き1.5℃の達成の道筋を追求し、とりわけ炭素集約型産業を対象に再生可能エネルギー、水素、原子力、炭素回収・利用・貯留を含むすべての脱炭素技術を動員していくことが重要であると指摘しました。

    パネルディスカッション1「COP28の結果と今後の取り組み」では、始めにUNU-IAS竹本明生プログラムヘッドが、UNU-IASの取り組みを含む COP28の成果について発表しました。その後のディスカッションでは、気候変動の進行や脱炭素への移行に伴って世界各国で発生している様々な問題とその解決案や科学に基づいた政策立案の重要性などが議論されました。また、先進国と途上国など国家間の連携、自治体、民間セクターや市民社会などマルチステークホルダー間の連携と分野間のシナジー(相乗)強化についての議論も行われました。

    パネルディスカッション2「能力構築の強化とユースのエンパワーメント」では、UNU-IAS丸山鳴プログラムコーディネーターが、COP28におけるユースの参加の拡大についての動向と、パリ協定特修コースを含むUNU-IASのユースエンパワーメントの取り組みについて紹介しました。その後、UNU-IAS鳥居直樹プログラムコーディネーターがモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、各国の実情を踏まえたユースへの平等な機会の提供や継続的なキャリア構築の道筋を示すことの重要性、実体験を伴った知見の構築の有用性、ユースの参画促進にとどまらない意思決定プロセスへのユースの参加を促進するための枠組みの必要性が指摘されました。最後に勝間靖アカデミックプログラムアドバイザーが総括を行いイベントは閉会しました。

    Photo: UNU-IAS