気候&SDGsシナジー会議サイドイベント:自然を基盤とした解決策として生態系回復の重要性を強調

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  • 2022年7月22日     東京

    Photo: Miwa Higashimuki / UNU-IAS

    2022年7月20日に開催された 「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」のサイドイベントでは、生物多様性、気候変動、持続可能な開発といったグローバルな課題への対処に役立つ自然を基盤とした解決策として、生態系の回復に関する議論が交わされました。本イベントは、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、国連食糧農業機関(FAO)、生物多様性条約事務局 (CBD) の共催で行われました。

    開会挨拶で、UNU-IAS の山口しのぶ所長は、気候変動および生物多様性の危機への取り組みに失敗したことが、複数の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を妨げていると指摘しました。土壌の劣化と森林破壊は主要な原因の中の最たるものであり、劣化した生態系の回復は、気候変動を緩和するとともに経済成長に寄与します。

    UNU-IAS の西麻衣子研究員は、生物多様性、健康、持続可能性の相互関連性について発表し、UNU-IASの新刊である「社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)における生物多様性-健康-持続可能性の相互関連性(英題:Biodiversity-Health-Sustainability Nexus in Socio-Ecological Production Landscapes and Seascapes (SEPLS))」を紹介しました。本書籍は、 SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の加盟団体らが行った世界各地からの事例研究をまとめています。

    東京大学の橋本禅准教授は、生物多様性の保全を考慮しない気候変動対策では生物多様性の減少に歯止めをかけることはできない、と主張し、大規模な単一種の森林や、外来樹種の植林、メガソーラー発電所の建設といった対策が生物多様性に悪影響を与えてきたことを指摘しました。

    FAOのコンサルタントであるアンドレア・ロメロ氏は、世界中の生態系の劣化を防止、停止、回復させるための国際キャンペーンである「国連生態系回復の10年」について紹介しました。また、「生態系回復のための原則」 や「世界能力必要性評価」 を発表してきた「ベストプラクティスに関するタスクフォース」 について取り上げ、今後も回復の取り組みを牽引し、知識の普及に努め、能力育成を支援するためにさらなる資源を生み出していくことを強調しました。

    インド洋沿岸海域の研究および開発(CORDIO)のデビッド・オブラ 東アフリカディレクターは、ポスト2020生物多様性枠組(GBF)の生態系目標と回復ターゲットについて論じ、交渉中のGBF目標には、保護地域の確立に加えて、自然生態系の面積拡大や持続可能な生態系の管理が含まれていることを説明しました。

    UNU-IASのブルーノ・レレス パートナシップ・アソシエイトが司会を務めたセッションにおいて、登壇者たちは、SDGsを達成するためには人間と自然との健全な関係に基づく包括的なアプローチが必要であることを強調しました。さらに、長期的な持続可能性戦略を構築するためには、異なる分野間における相乗効果を見出すことが不可欠であることが確認されました。

    総括として、CBD事務局の鈴木渉氏は、開発途上国における生態系回復の取り組みを支援するために、CBD事務局が「森林生態系再生イニシアティブ」(FERI) を実施してきたことを紹介しました。FERIは、2022年9月から11月の間に、生態系回復に関する公開オンラインコースを提供します。また、GBFは、統合的なランドスケープ・シースケープ計画、保全、「地域をベースとするその他の効果的な保全手法(OECMs)」と並行して、生物多様性保全に向けた地域ベースの生態系回復の重要性を認識している、と付け加えました。生態系回復目標を達成するためには、FERIやSatoyamaイニシアティブといった既存の取り組みとともに、新たな取り組みも同時に行なっていくことが必要です。