東アジア農業遺産学会にて、持続可能な開発目標における伝統的農業の役割が強調される

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  • 2015年7月22日     新潟県佐渡市

    2015年6月23日から25日、新潟県佐渡市にて「第2回東アジア農業遺産学会(ERAHS:East Asia Research Association for Agricultural Heritage Systems)」が開催されました。

    世界農業遺産とは、国連食糧農業機関(FAO)に認定された世界的に重要な伝統的農業のことで、本会議には、中国・韓国・フィリピンからの参加者を含め、研究者・政策立案者・地方行政担当者など約150人が参加し、東アジアにおける農業遺産システムの保全に関する事例や研究成果について意見が交わされました。

    世界農業遺産の意義として、FAO駐日連絡事務所長のボリコ・チャールズ氏が、持続可能な開発につながる伝統的な農業の重要性を強調すると、持続可能な開発目標(SDGs)における農業の役割についても、国連大学上級副学長の武内和彦教授から指摘が上がりました。武内教授は「東洋的自然観に由来する「共生」概念は、農業の持続可能な開発を後押しするものだ」と述べました。

    研究発表として、日本における独創的な農文化システムについて、国連大学リサーチアソシエイトのイヴォーン・ユーから、その総合的な評価手法について報告がなされ、また、限界地域のおかれた状況についても、同シニアプログラムコーディネーターの永田明から日中韓の比較結果が発表されました。

    参加者のための視察として、佐渡の薪能や佐渡金銀山の近代化産業遺産などを回る活動も行われ、佐渡市新穂正明寺地区の水田での生き物調査体験では、水田のすぐ上を舞うトキの群れに出会った参加者たちが歓声を上げていました。

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    この会議はERAHSと佐渡市が主催し、FAO、UNU、中国科学院地理科学・自然資源研究所 (CAS-IGSNRR)、韓国農村遺産協会(KRHA)、J-GIAHSネットワーク会議(J-GIAHS)、新潟県の共催、農林水産省の後援により開催されました。

    国連大学はこれまで積極的に東アジア諸国、特に日中韓の農業遺産システムの研究とFAOの世界農業遺産の保全に関する協力を推進してきました。今後も、日中韓の研究者で構成されるERAHSを通して、世界農業遺産に関する情報や経験を共有し、東アジアにおける農業遺産システムの持続可能性に貢献することを目指します。

    本会議の詳細については、イヴォーン・ユー(UNU-IAS)までご連絡ください(yiu@unu.edu)。