2022年11月14日 シャルム・エル・シェイク
2022年11月10日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された第27回気候変動枠組条約締約国会議(COP27)の一環として、ジャパン・パビリオンにおいてサイドイベントを開催しました。本イベントでは、気候変動に関するパリ協定と持続可能な開発のための2030アジェンダとの間のシナジー(相乗効果)を強化するための行動について議論が交わされました。
冒頭の開会挨拶では、環境省の小野洋 地球環境審議官が、今年7月に国連大学で開催された「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」について言及し、成果を次のステップにつなげることが重要であると話しました。また、ユースのエンパワーメントの必要性を強調した上で、UNU-IASの大学院学位プログラムにおけるパリ協定専攻創設の取り組みに関する謝辞が述べられました。
UNU-IASの山口しのぶ所長は、2023年秋より開講するパリ協定専攻について概説し、これは国連機関による初めての試みであると紹介しました。また、UNU-IASが教育・能力構築プログラムを通じてステークホルダーを支援することにより、SDGsおよびパリ協定目標の達成に向けて取り組んでいることを強調しました。
UNU-IASの竹本明生プログラム・ヘッドは、基調講演を行うとともに、パネル・セッションで司会を務めました。セッションでは、国連機関、自治体、ユース、研究機関の代表者らによって、シナジーをもたらす行動とユースのエンパワーメントに関する経験や教訓が共有されました。
国連経済社会局(UNDESA)持続可能な開発目標部門のバハレ・セイディ持続可能な開発シニア担当官は、「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」の主要な課題と提言まとめを共有し、COP27など政府間交渉の場での話し合いを通じて気候行動とSDGsアジェンダを推進することの重要性を強調しました。
国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の環境開発部サングミン・ナム ディレクターは、アジア太平洋地域がカーボンニュートラルを目指しつつも、今後も排出量の増加が見込まれていることを強調し、気候変動対策と自然を基盤とした解決策(NbS)との間にシナジーをもたらす行動について論じました。そして、そのためには、技術的な実現性やNbSへの投資が鍵となると述べました。さらに、NbS推進には労働力が求められるとして、高齢化による人口動態の変化が考慮されなければならないことを指摘しました。
インド・エネルギー・資源研究所のラジャニ・ランジャン・ラシュミ上席フェローは、エネルギーの需要が高まっていることを受け、インドが目標として掲げる2030年までのCO2排出量45%削減の達成に向けては、分散型の太陽光発電の導入が重要であると述べました。また、持続可能な生産と消費の実践を通じて、カーボンフットプリントを減らす必要があると強調しました。
UNU-IASのスニータ・サブラマニアン研究員は、相互関連的な課題に対処するためには、公正で統合的なアプローチが必要不可欠である、とした上で、気候変動分野と生物多様性分野が協働してトレードオフ(両立不可能性)を最小化しシナジーを最大化した例として、「ワンヘルス」アプローチについて解説しました。
デンマーク、オーフス市の持続可能なシステムデザインと研究– 子どもと若者を担当するクレイグ・アレク・ナイティブ氏は、ユースの積極的な活動を市民の日常生活や普及啓発に組み込むための若者への支援提供ツールの例として、オーフス市ユース議会の取り組みを紹介しました。
国連生態系回復の10年タスクフォースのユース代表であるアヤディ・ミシュラ氏は、ユースの参画を意義深いものにする必要性を強調した上で、インドにおける参加型のアプローチについて紹介し、ユース、先住民族、政治家など様々なステークホルダーを巻き込んでゆくためには、ボトムアップとトップダウンと両方のアプローチが必要だと述べました。
アース・アドボカシーのユシフ・ツニジ・ケラニ エグゼクティブ・デイレクターは、アフリカ諸国において気候変動の緩和と適応戦略の実施のための農業分野のイニシアチブを通じてユースの参画が進んでいることを指摘しました。
その後、公正な移行に向けた雇用の創出、世代間のエンパワーメントを含む教育、グローバルで包括的な資源、学校システムと持続可能な開発プログラムの統合、全社会的アプローチ、などのテーマについて議論が行われました。