金沢にてSDGsの達成に向けた地域における行動の推進を議論

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  • 2023年11月28日     金沢

    Photo:UNU-IAS

    2023年11月11日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は金沢市でイベントを開催し、持続可能な開発目標(SDGs)の推進を加速させるための多様なアプローチとイニシアティブについて議論しました。

    冒頭、UNU-IAS山口しのぶ所長は2030年までのSDGsの目標のうちわずか15%しか進んでいないことを取り上げた上で、地方における目標達成に向けた行動が急務であると強調しました。山口所長はセッションに参加したユースを歓迎し、政策立案にユースを巻き込む責任があることも共有しました。

    フィリップ・オサノ(ストックホルム環境研究所所長、UNU-IAS評議委員会議長)は、ナイロビ国立公園内および周辺の野生生物を、建設や気候変動の影響から保護する取り組みについて紹介しました。本取り組みでは生態系サービスに対する支払い(PES)制度を用いて牧畜コミュニティに土地を開放するための支払いを行っています。オサノ 評議会議長は、このような取り組みが貧困をなくそう(SDG 1)、陸の豊かさも守ろう(SDG 15)および人や国の不平等をなくそう(SDG 10)など複数のSDGの達成に役立っていることを説明しました。

    メリッサ・ゴッダール(イェール大学マクミラン国際地域研究センター副所長、UNU-IAS評議会委員)は、SDGsと大学の取り組みとのつながりについて話しました。ゴッダール委員は、大学の役割はSDGsを分析し、課題解決を進めることにあると強調し、イェール大学とペンシルベニア大学で実施された演習の内容を紹介しました。演習では大学で実践している教育、研究内容をSDGsの目標へマッピングし、農業、鉱業、プラスチック汚染および文化などに関する検索可能なデータベースを作成しました。その上で、各教育、研究内容とSDGsの目標とのギャップを特定しています。また、ゴッダール委員は、2024年9月の未来サミットが2030年以降の持続可能な開発計画の行動を再活性化し、検討する良い機会であると話しました。

    小島光雄(メットライフアセットマネジメント株式会社代表取締役、UNU-IAS評議会委員メンバー)は、SDGsを達成するためには資金と科学的助言の両方が必要であると強調し、UNU-IASの貢献について取り上げました。日本がネットゼロ(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)に向けた初のグリーン・トランジション・ボンドを発行したことも言及し、日本のステークホルダー資本主義の一環として、トランジション・ファイナンス(脱炭素社会の実現に向けた戦略を基に着実なGHG削減の取組を行う企業に対し、その取組を支援することを目的とした新しいファイナンス手法)が効果的であると提案しました。さらに小島委員は、日本において持続可能なファイナンスを広く社会に認知させ、行動を促進するために日本語で関連用語や概念を広めることの必要性を強調しました。

    UNU-IASフアン・パストール・イヴァールス研究員は、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)にて実施している持続可能な都市自然プロジェクトを紹介しました。本プロジェクトは、都市自然の保全のための持続可能なモデルを開発し、生物多様性と文化的多様性の関連性を反映することを目的としています。豊かな水資源により、金沢は生物多様性に富んでいます。本プロジェクトでは金沢市内の庭園の環境的、社会的および経済的利点を科学的に証明しています。本プロジェクトを含むOUIKの活動は、2023年10月の国連環境計画(UNEP)による都市の生態系の回復を促進させることを目的とした世代間環境回復プロジェクト(Generation Restoration Project)の都市生態系再生モデル都市への金沢の選定にあたってもその意義が認められました。

    セミナーにて行われたディスカッションでは、地球規模の持続可能な開発計画と一致する野心的な地域イニシアティブの重要性が強調されました。またメンタルヘルスや幸福を含む、福祉を促進するための行動の重要性も取り上げられました。これは、すべての人に健康と福祉を(SDG3)にもつながります。

    また、登壇した3人のUNU-IAS評議会委員はOUIKを訪れ、その活動内容についての学びを深め、助言を行いました。