UNU-IASシンポジウムで、持続可能な開発目標の作成と実施に向けた科学の役割りが議論される

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  • 2014年12月2日     東京

    Photo: POST2015

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    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、東京工業大学POST2015プロジェクトにより11月15日六本木アカデミーヒルズで開催された国際シンポジウムでは、開発や持続可能な開発目標(SDGs)に科学を取り入れていく上での課題や好機について検証を行いました。科学と持続可能な開発目標をテーマとした今回のシンポジウムには、ポスト2015年開発目標に精通する科学者や専門家らが参加し、今後のSDGsプロセスにおける政策と科学の相互作用をテーマに活発な議論が行われました。

    チャバ・コロシ大使(国連ハンガリー政府代表部大使、SDGsに関するオープン・ワーキング・グループ共同議長)による基調講演では、SDGsに関する国際交渉もこれまでの国際交渉同様、長期的な政治的、そして経済的な勢力争いと切っても切れない関係にあることを鑑みれば、SDGsへの推移を進めるには、現在の南北関係をも越えたパラダイムシフトが必要となる点が強調されました。またコロシ大使は、科学者コミュニティー、とりわけ革新的な科学と政策の相互作用の必要性を繰り返し指摘しました。

    続くマーク・スタフォード・スミス氏(オーストラリア連邦科学産業研究機構サイエンス・ディレクター、フューチャー・アース科学委員会議長)による基調講演では、近年顕著に現れている人為的な環境変化に焦点をあて、グローバルな災害を食い止めるための協調的行動が必要であることが強調されました。スミス氏は科学と政策をポスト2015年開発アジェンダに結びつけるハブとしてのフューチャー・アースの役割を紹介し、総合的な目標、相乗作用やトレード・オフを利用することにより、複数の目標を達成するための可能性を提示しました。

    続くパネルディスカッションでは、政策プロセスと科学の相互作用に携わっている専門家たちにより、SDGsの制度設計に向けた科学者の担う役割など、実際の経験談を交えた議論が行われました。 蟹江憲史(UNU-IASシニアリサーチフェロー、東工大准教授)は、科学者と政策実行者によるSDGs作成に向けた恊働に一定の成果はあったものの、その策定や実施に向けては様々な欠点が残ると指摘しました。

    ターニャ・エイブラハムズ氏(南アフリカ国立生物多様性研究所CEO、国連科学諮問委員会委員)は良い組織の重要性を説き、SDGsの実施のみならず科学コミュニケーションにおいても革新的な考え方が大切であると強調しました。また、SDGsを実施する上で障害となりうる複雑なシステムに対応するためには、人的・組織的能力の向上、また確固たるリーダーシップが必要であると訴えました。

    同じく国連科学諮問委員会委員を務めるマリア・イワノワ、マサチューセッツ大学ボストン校准教授は、グローバル環境協定に関する報告システムに関する研究結果について報告しました。イワノワ准教授からは、新たなモニタリング組織を作るのではなく、現存のモニタリングや報告フレームワークを活かしたより良いガバナンス構造の構築の必要性が主張され、それに向けては国連機関の有機的な連携が必要であることが言及されました。

    最後に、コロシ大使はSDGsは法的拘束力のあるものではなく、政治的コミットメントが主となる事を鑑みれば、SDGsを現存する法的拘束力のある国際合意やターゲットと有機的に結びつける事が可能であると強調しました。また、大使はこの先15年の間に科学コミュニティーによってもたらされる科学の飛躍的な進歩により、目標やターゲットが大きく進化することに大きな期待を寄せ、議論が締めくくられました。

  • チャバ・コロシ – Sustainable Development Goals and Post2015 Process Science and Politics

    (5.0 MB PDF)

    マーク・スタフォード・スミス – Science in Support of the SDGs

    (3.1 MB PDF)