専門家たちが高等教育の未来を再考して議論

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  • 2022年5月20日     バルセロナ


    2022年5月18日、バルセロナで開催されているユネスコ世界高等教育会議2022のラウンドテーブル・セッションにて、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の山口しのぶ所長は、「持続可能な開発のための2030アジェンダおよびその先に向けた高等教育の役割」について語りました。本セッションでは、「高等教育の未来を再考する」というテーマで、教育のための新しい社会契約(暗黙の相互理解に基づく社会システム)における高等教育の役割について議論しました。

    本セッションでは、ユネスコの報告書『共に我々の未来を再考する:教育のための新たな社会契約(英題:Reimagining Our Futures Together: A New Social Contract for Education)』が持つ意味に焦点が当てられました。2021年11月に発行された本報告書は、全ての人のための平和で公正かつ持続可能な未来に向けた教育の変革を導くものです。UNU-IASは、同報告書の諮問委員会のメンバーとして、100 万人以上が参加したグローバルな協議プロセスに貢献しました。

    ユネスコのステファニア・ジャンニーニ教育事務副局長による本セッションの開会挨拶では、高等教育が「教育を受ける権利」という決定的に重要な概念の一部であり、より包摂的でなければならないことが強調されました。エチオピア連邦民主共和国のサーレワーク・ゼウデ大統領は、ビデオ演説の中で、知識と学習こそが持続可能な未来への変革の基礎であり、その実現にはわれわれの最も創造的な能力が必要である、と強調しました。

    リスボン大学のアントニオ・ノボア名誉学長兼教育学教授による基調講演では、上記報告書の重要メッセージが強調されました。ノボア教授は、大学にとって最大のリスクはリスクを取れないことであるとして、高等教育分野の大きな責任と多様なアプローチの必要性を強調しました。さらに、再考と再構想を促す報告書の呼びかけに応え、勇気ある大胆な行動を求めました。

    ユネスコ・学習とイノベーションの未来ディレクターであるソブヒ・タウィル博士の司会によるパネル・ディスカッションでは、新しい社会契約の一環として高等教育の変革が検討されました。国際大学協会のヒリッジ・ヴァントランド事務局長は、大学はオープンで包摂的であるべきであり、市民を巻き込む特別な機会となり得る、と強調しました。山口所長は、共同研究や教育を通じて異なる持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みを橋渡しする、高等教育のユニークな能力に焦点を当てました。また、アジア太平洋地域の5つの大学と共同で開発・実施された防災教育に関するカリキュラムと、2023年秋に開講予定の新しい大学院学位プログラムである気候変動に関する「パリ協定専攻」という、UNU-IASの革新的な2つのイニシアチブで注目を集めました。世界学生フォーラムのセバスチャン・ベルガー事務局長は、持続可能な開発のための教育(ESD)がすべての教育レベルで必要とされていると指摘し、大学に対してガバナンスを民主化し、二酸化炭素排出量を削減することを求めました。

    ユネスコのラテンアメリカ・カリブ海地域国際高等教育研究所のフランセスク・ペドロ所長の司会で、高等教育の未来についての思考プロセスに焦点を当てた2つ目のパネルディスカッションが行われました。ブリストル大学教育と社会の未来学部のケリー・ファゼール教授は、必要な変化と多様な視点の受容について熟考するよう呼びかけました。南アフリカ大学教育学部のムピネ・マコエ学部長は、われわれが異なる未来を創造する方法に焦点を当て、更なるシステム思考を促しました。マレーシア国際イスラム大学のズルキフリ・アブドゥル・ラザク学長は、協働の文化を創るために個人から始めること、また伝統的で持続可能な実践から学ぶために過去を探求することの必要性を強調しました。

    参加者同士の議論では、高等教育と他のレベルの教育とのつながりや、いかに大学とコミュニティが連携できるか、が検討されました。また、地域のステークホルダーを結びつけるグローバルなネットワークであるESDに関する地域の拠点(RCEs)の重要性が注目されました。

    閉会にあたって、ジャンニーニ教育事務副局長は、「教育の未来」報告書の生きた文書としての価値を、即ち本報告書が教育ひいては最終的に社会を再生するための継続的なプロセスであることを強調し、セッションを締めくくりました。