情報通信技術の活用によるこれからの地域づくりを議論

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  • 2020年2月18日

    2020年2月13日、UNU-IASは環境省及び地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)との共催により、シンポジウム「科学技術イノベーション(STI)がもたらす地域の新たな価値創造」を開催しました。シンポジウムには129名が参加し、政府、専門家、実践者が、ICT(情報通信技術)等の活用によるこれからの持続可能な地域づくりや新たな協働関係(パートナーシップ)の構築について議論を行いました。

    本セッションでは、自治体と大学から3つの事例が発表された後、パネルディスカッションが行われました。最後に、武内和彦UNU-IAS上級客員教授が総括を行いました。

    冒頭の開会挨拶で登壇した中井徳太郎 総合環境政策統括官は、環境省がSDGs達成に向けて行っている取り組みと地域循環共生圏の創造について説明しました。これらの推進においては、地域の特性に着目しながら、各方面と連携を図っていることが強調されました。

    次に、中村道治 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)顧問/国連10人委員会メンバーが「先端科学技術・パートナーシップによる地域発社会変革」と題して基調講演を行いました。中村氏は、SDGs達成のためのSTIについて、これらがSDGsにどう貢献するかを具体的に示し、国レベル、地域レベルの成長戦略に組み込むことが重要であると強調しました。また、STI推進が格差を生まないようにするためには、人材育成・教育が非常に大事であると述べました。

    続いて、3つの地域から事例発表が行われました。

    篠原一生 一般社団法人壱岐みらい創りサイト事務局長は、壱岐市のSDGs達成への取り組みを解説しました。「壱岐なみらい創り対話会」というプロジェクトを通じて、住民が主体となって壱岐の未来のために行いたいことを提案し、プロジェクト化した事例が紹介されました。

    増田貴史 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科講師と杉山歩 山梨県立大学国際政策学部国際コミュニケーション学科准教授は、3つの科学技術を活用し、伝統産業である加賀友禅の染料を化学染料から天然染料化することで、染色排水の無害化を実現した事例を示しました。また、その過程においては科学者だけでなく、加賀友禅作家、農家、デザイナーが協働したことが述べられました。

    村下公一 弘前大学COI研究推進機構(健康未来イノベーションセンター) COI副拠点長・教授からは、住民や企業を巻き込んで、健康診断のビッグデータを収集し、寿命革命を起こすまちづくりを目指す取り組みが紹介されました。大学のプラットフォームとしての価値向上には、さまざまな領域から幅広い分野の専門家が集合することが重要であると強調されました。

    後半には、発表者に加えて、村山泰啓 国立研究開発法人情報通信研究機構ソーシャルイノベーションユニット戦略的プログラムオフィス研究統括、三木清香 環境省大臣官房総合政策課 環境教育推進室/民間活動支援室室長が参加し、藤田香 日経BP日経ESG編集シニアエディター/日経ESG経営フォーラムプロデューサーがモデレーターを務めるパネルディスカッションが開催されました。ディスカッションでは、科学技術イノベーションを活用し地域の価値創造を成功させるためには、多様な主体(ステークホルダー)の協働が非常に重要であるという点や、望ましい未来像として、地域の幸せや自然資本を大切にしながら豊かな地域をつくるという在り方を求めてバックキャスト(目標となる「未来」を起点とし、そこから逆算して「今」何をすべきかを考える)することが重要である、という点が共有されました。

    総括には、武内和彦UNU-IAS上級客員教授が登壇しました。武内氏は、幅広く科学技術を捉え、社会や地域に展開していくことが、新しい価値創造につながると述べ、シンポジウムを締めくくりました。