専門家がインド・ヴィシャーカパトナム市を事例に水管理政策を協議

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  • 2021年11月3日     東京&オンライン

    UNU-IASは2021年10月25日、持続可能な水管理の課題と機会を検証する国際ウェビナー「アジア都市における持続可能な水資源管理:課題と機会」を開催し、インドや日本などから約150名が参加しました。インド・アーンドラプラデーシュ州ヴィシャーカパトナム市でUNU-IASが実施したケーススタディを事例に、環境面での持続可能性と経済発展の実現に向けた効果的な水管理政策を議論することを目的に、UNU-IASがインドの学術機関(アーンドラ大学、およびラジーヴ・ガンディ知識技術大(Rajiv Gandhi University of Knowledge Technologies (RGUKT)と共催したイベントです。

    本ウェビナーの冒頭にはRGUKT総長KC Reddy氏による挨拶が行われ、地域の違いを超えた多様な社会層への水資源の配分が、人間の生活の質の向上に果たす役割が強調されると共に、1)水資源の保全、2)人間一人当たりの水の配分の充足化、3)持続可能な水資源管理モデルの構築の必要性が言及されました。

    続く開会スピーチでは、アーンドラ大学のM. Prasada Rao氏により、ヴィシャーカパトナム市の水環境の概要と、水環境改善にむけた一般市民の啓蒙、多種多様な関係者との連携の重要性が述べられました。基調講演にはヴィシャーカパトナム市政府長官G. Srijana女史を招き、水の再生・再利用・持続可能な管理の重要性について認識を共有しました。UNU-IASからはアカデミック・ディレクターの福士謙介教授が基調講演に参加し、地球規模の環境問題と気候の変動の概要に触れつつ、健全な水システム、科学的データの収集、正確なモデル化の技術などが社会のレジリエンス構築に果たす役割についての知見を共有しました。

    UNU-IASがヴィシャーカパトナム市で実施した研究内容は、UNU-IASの研究者2名(ギータ・モハン氏、サローズ・チャパガイ氏)から発表されました。研究内容は、ある経済セクターによる産業活動、水消費、汚染物質の排出が他の経済セクターによるそれに与える影響を、産業連関モデルを用いて分析するというものです。またヴィジャヤワーダ市水資源部のShri. K.S. Sastry氏からは、州政策の観点からアーンドラプラデーシュ州の水資源管理の課題と、同地域の水源や政府の取り組みが披露され、RGUKTスリカクラム・キャンパス所長のP. Jagdeeswara Rao史からは、ヴィシャーカパトナム市の水質の状況が発表されました。

    質疑応答では、UNU-IASのギータ・モハン氏がモデレーターを務め、インド国内およびアーンドラプラデーシュ州における持続可能な開発推進に向け、インドの優良事例の収集が肝要であること、水資源のより厳格な規制とモニタリングが必要であることなどが議論されました。

    パネル討論「インド都市における持続可能な水管理の計画と実施に政策が果たす役割」では、UNU-IASの福士謙介教授をモデレータ—に、産業界・NGO・政府機関及び学術界からの参加者による意見交換が行われました。討論を通じて、既存の水資源量の把握、現場の背景に適した解決策の提案、これらの実現に向けた関係者の協働と統合的なアプローチの必要性が確認されました。更には地域資源の保護・管理に果たすコミュニティの啓蒙の重要性も議論されました。当日の議論は全国紙The Hindu(全国版地方版)および地方紙「Prajasakti」(テルグ語)にも掲載されています。