公開フォーラムで生物多様性の保全のための世代を超えたパートナーシップについて議論

, ,

ニュース
  • 2023年7月18日     秋田市


    2023年7月8日、国連大学国際高等研究所(UNU-IAS)は日本の秋田市で、第9回SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)会合の一環として、「未来の再構築:青年の力と自然との調和での貢献」というテーマで公開フォーラムを共催しました。本イベントでは、どのように地域および地球規模の保全活動を若者の参画のもとで進められるかについて議論が交わされました。本フォーラムは、国際青年生物多様性ネットワーク(GYBN)、国際教養大学(AIU)、環境省と共同で開催されました。

    開会にあたって、UNU-IASの山口しのぶ所長は、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が、自然資源の持続可能かつ公平な利用を確実なものとするために全社会的アプローチを優先していることを強調しました。また、政治的な意志に加えて、すべての関係者があらゆるレベルにおいて協調的な行動をとることが必要であり、人間と自然の共生社会を実現するためには、若者の意見を反映することが極めて重要であると述べました。

    国際教養大学のモンテ・カセム学長は、生物多様性が人間の福祉に不可欠であることを指摘し、大型動物の生息地の喪失がCOVID-19などの動物由来の感染症の増加と関連していることを強調しました。また、保護地域だけでは地球の生物多様性を維持し育むのに十分ではなく、その他の生態系保全手段が創造的な解決策に向けた空間の創出に役立つと指摘しました。

    GYBNの共同創設者であるクリスチャン・シュヴァルツァー氏は、GBFの実施には環境省だけでなく、すべての政府部門からの政治的な支持が必要であることを強調しました。そして、経済や社会のすべての分野に対して、生物多様性の保全の重要性を完全に認識するよう求めると共に、分野横断的環境主義が自然と調和した社会の実現に重要であると語りました。

    UNU-IASのアレクサンドラ・フランコ コミュニケーションズ・アソシエイトは、IPSIの使命と目標を紹介し、本パートナーシップが持続可能な生産、伝統的知識、地域社会の参画を促進することでGBFの実施を支援することを目指していると説明しました。

    GYBNの共同創設者であるメリナ・サキヤマ氏は、若者が根本的なシステム全体に対する戦略の分野を超えた再編成を求めており、社会が若者と手を取り合って取り組む方法について十分理解できてないと指摘しました。また、若者の参画が形式的なものになることは避けるべきであり、若者の意見や経験の多様性を認めなければならないと述べました。

    パネルディスカッションでは、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)や世代間知識の伝承を推進することへの若者参画の可能性、および若者の関与を妨げる障壁の克服に焦点が当てられました。登壇者は都市と農村の分断、科学技術への普遍的なアクセスの欠如、経験不足を理由とする若者を意思決定に含めることへの抵抗感などについて議論しました。提案された解決策としては、メンターシップ(指導者)・プログラムや地域の政策立案への参加機会、実践的な経験を得るためのワークショップや共同プロジェクト、若者主導の保全活動への財政支援などが挙げられました。また、年齢だけが若者の唯一の要素ではないこと、むしろ生物多様性危機を解決するためには柔軟な思考や態度、熱意が必要であるという認識を共有しました。

    最後に、UNU-IASの客員教授でもある地球環境戦略研究機関の武内和彦所長は、気候変動と生物多様性の喪失の深刻さが認識されなければならない一方で、希望に満ちた態度をもって若者によるアイディアの共有を勇気づけることが重要だと結論づけました。また、ガーナ国立生物多様性委員会の議長でもあるIPSI運営委員会のアルフレッド・オテン・イェボア議長は、若者の創造性とイノベーションを活用する上で、世代を超えたパートナーシップが不可欠であると強調しました。