SDGs達成に向けた高等教育の役割の進化を検証するフォーラムを開催

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  • 2023年7月25日     ニューヨーク

    2023年7月17日、国連持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)の特別イベントとして、高等教育サステイナビリティ・イニシアティブ (HESI)グローバル・フォーラム 2023がニューヨークの国連本部で開催されました。本イベントでは、高等教育が、新型コロナウイルスからの回復と、持続可能な開発のための2030アジェンダの実装をあらゆるレベルで加速するための課題と機会について議論が交わされました。

    開会の辞で、国際連合経済社会局(UN DESA) のマリア・フランチェスカ・スパトリサノ政策調整・機関間担当副長官は、SDGsの支援と推進における高等教育の独自の役割を強調しました。ユネスコのステファニア・ジャンニーニ事務局長補は、高等教育へのアクセスは質、公平性、包摂性の原則に基づいて推進されるべきであると言及しました。

    国連大学のチリツィ・マルワラ学長・事務次長による基調講演では、デジタル化と人工知能(AI)が高等教育に与える影響について議論されました。批判的思考と適応力を教えること、多様な学習スタイルに対応するべくAIを活用した学習経験を増やすこと、責任あるAIの実践と倫理的な利用を促進すること、デジタルテクノロジーへの公平なアクセスを確保することの重要性を強調しました。また、高等教育の役割の進化を考慮し、持続可能な開発を達成するために、高等教育セクターの変革に的を絞ることを強調しました。これには、機関間のパートナーシップの促進、高等教育の質評価における革新的な実践の支援、持続可能性の問題に関する学術出版物の促進、グリーン・ジョブに対する需要の高まりへの対応が含まれます。そして、高等教育機関は知識と革新の中心として、COVID-19からの回復を加速させ、誰一人取り残さないSDGsを達成するための士気を高める独自の立場にあると結論づけました。

    ジョージア工科大学のアンヘル・カブレラ学長は、テクノロジーは教育へのアクセスに不可欠であり、学生がグローバルな課題に対する解決策を開発できるリーダーとして成長するのに役立つはずであると強調しました。COVID-19からの回復について、ネルソン・マンデラ大学のジェラルディン・フレーザー・モレケティ学長は、大学に入学した学生たちの現状に即した、基礎的、補強的、拡張的なカリキュラムの必要性が高まっていると指摘しました。モーリシャス高等教育委員会のロメーラ・モヒー委員は、モーリシャスでの経験を振り返り、パンデミックから得た重要な教訓は、柔軟性の高い学習経路を確保することであると指摘しました。

    プレゼンテーションでは、2030アジェンダの実施を促進する高等教育の取り組みと活動グループが紹介されました。グリーン・ジョブのためのHESI教育行動グループのデブラ・ロウ共同議長は、グリーンで持続可能な社会への包摂的な移行に向けた労働力の割合と質の向上について言及しました。UN DESAのDSDGアウトリーチ・パートナーシップ部 持続可能な開発担当 オラ・ヨランソン氏は、高等教育におけるSDGsの統合に関する知識の格差を強調し、これこそが大学間の専門知識の交換を促進しパートナーシップを育む役割を担う「HESIパートナー・プログラム」の設立として結実したことを説明しました。HESI格付け・ランキング・評価アクショングループのダンカン・ロス共同議長は、SDGsの進捗状況の測定を改善するために、書誌計量学関連機関との連携したり、持続可能性を促進するために認定機関と協力したりする計画について議論しました。

    若者主導のパネルディスカッションでは、SDGsの推進における学生や若者の創造性、情熱、革新性に焦点が当てられました。高等教育機構のエリアン・エル・ハベル大使は、高等教育機関が教育方法にテクノロジーを取り入れる必要性について議論しました。学習プラネット・アライアンスの学習プラネット・ユース・フェローであるベネディクタ・ネイサ・ナタニア氏は、学際的プロジェクト、共同研究の取り組み、学部を超えた協働が、創造性、批判的思考、問題解決能力を高めるきっかけになると指摘しました。計算論的感覚研究所PRELSスカラーXRリードでもあるPSEGサステイナビリティ研究所のイマン・カンバーバッチ プロジェクト・マネージャーは、サステイナビリティ問題を前面に押し出し、重要な変化を促すインタラクティブな学習ツールとしての拡張現実(XR)に関する自身の研究を紹介しました。プラン・インターナショナル・カナダのガールズ・ビロング・ヒア大使であるアヌーシュカ・シンハ氏は、持続可能な開発に携わる学生により良い準備をさせるため、既存のカリキュラム内に包括的な体験学習の機会を設ける必要性を強調しました。

    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の大学院生たちも、東京の会場からオンラインで参加しました。UNU-IASの修士課程学生であるブライト・オセイ・イエボア氏は、研究と科学技術におけるスキル開発の重要性を強調しました。また、UNU-IASの大学院学位プログラムでは、学生が学際的研究を行うことを奨励しているけれども、これはサステイナビリティの研究において重要なスキルであり、世界中の大学が教えるべきものだと述べました。学術機関、産業界、その他のステークホルダー間のパートナーシップを強化することも、専門的スキルの開発を確実にする上で重要です。

    最後に、UNEP環境教育・青少年ユニットチーフ、HESI共同議長のサム・バラット氏が、学生と彼らのニーズに焦点を当てるよう呼びかけ、変革の担い手としての高等教育の重要な役割を強調しました。

    背景

    高等教育サステイナビリティ・イニシアティブ(HESI)は、複数の国連機関と高等教育界をつなぐパートナーシップであり、現在、国連経済社会局(UNDESA)と、すべての人のためのサステイナビリティ・リテラシーの向上を目指す非営利団体かつオンライン・プラットフォームであるSulitest Associationが事務局を務めています。その他の国連パートナーには、ユネスコ(UNESCO)、国連環境計画(UNEP)、 国連グローバルコンパクト「責任ある経営教育原則(PRME)」イニシアチブ、国連大学、国連人間居住計画(UN-HABITAT)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連訓練調査研究所(UNITAR)、国連パートナーシップ事務所(UNOP)、国連アカデミック・インパクト(UNAI)が含まれます。