GGS第3期最終報告会を開催

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  • 2021年4月7日

    UNU-IASは2021年4月7日、文部科学省拠出国連大学助成事業「地球規模課題解決に資する国際協力プログラム (GGS)」の第3期目採択プロジェクト (2018-2020) の最終報告会(オンライン)を行いました。地球規模課題解決に資する国際協力プログラム (GGS) は、文部科学省のサポートにより、2015年度より実施されている事業です。
    今回の最終報告会では、第3期目として2018年度に採択された二件のプロジェクトが、COVID-19感染拡大前の2018年から2019年の間に実施した現地調査活動からの結果を踏まえ、三年間の実施から得られた成果を発表しました。以下は報告内容の要旨となります。

    テーマ1「包摂的で質の高い教育の実現に向けた課題解決」分野
    東京大学大学院教育学研究科付属学校教育高度化・効果検証センター
    『持続可能な開発のための教育 (ESD) の推進を通した社会的レジリエンスの強化 -モニタリング・評価枠組みと改善メカニズムの構築-』

    本事業は、持続可能な社会構築を担う人材育成の学習アプローチとされる、持続可能な開発のための教育(ESD)及びグローバル・シチズンシップ教育(Global Citizenship Education and Development: GCED)のモニタリング・評価体制の整備と強化を通じて、SDGsの目標4.7が掲げるESD/GCEDの量(施策)と質(学習を通じて育まれる能力の向上)の拡充をはかることを目的としました。
    事業の成果としては、第一に、グローバルな研究エビデンスに基づくESD/GCED評価概念枠組みと、日本やインドネシアなどの地域別コンテクストに合わせた指標セットを開発しました。それにより、アジア各国で指標の有効性や妥当性を検証することができ、グローバルレベルで認識されているモニタリング概念を、各国版のローカルツールに取り込んでいく際の課題や教訓を明示することができました。第二に、本事業で開発したモニタリングツールを日本とインドネシアのESD実施小中学校で用いたことで、ESD実践の実態を把握し、今後の課題を可視化することができました。特に日本の調査結果からは、児童・生徒および教員は、格差や不平等に関する知識を有するも、SDGsに関わる環境・経済・社会の相互関連性や自分自身の行動とそれらの関連性への理解が低い傾向にあり、今後は教員研修などでグローバルな課題への取り組みを支援していくことが必要と提案します。インドネシアの調査結果からは、地球環境問題や多様性の享受などに対する知識と意識は高く示されるものの、外国とのつながりやSDGsに対する理解や貢献への意識は未だに低い状況であることが明らかとなりました。今後は、本事業の成果をESDを実践する学校現場のみならず、研究機関や国際機関まで幅広い関係者に向けフィードバックすることで、ローカルとグローバルレベルでのさらなる貢献を目指します。

    (写真:インドネシアのハルク島でのベースライン調査)

    テーマ2「地球システムが直面する課題解決」分野
    東京大学大学院医学系研究科
    『女性の社会進出が進むカンボジアにおける母子の保健・福祉向上の鍵』

    本事業は、実施対象国のカンボジアでは女性の社会進出と養育者の多様化を前提とした保健福祉政策が不在であったため、その現状が国民皆保険制度や母子保健サービス提供に及ぼす影響について調査するフレームワークを確立しました。これらの成果は、今後の政策立案及び実施に向けて重要なインプットとなることが期待されています。また、保健施設が職場、地域、並びに就学前教育施設との連携で利用できるチェックリストを開発したことで、女性の社会進出と養育者の多様化に対応した保健福祉サービスの達成状況に関する持続的なモニタリングが可能となりました。
    女性の社会進出と養育者の多様化に関する政策を持続的に推進していくためには、省庁横断的な取り組みとともに、同時に、中央の公衆衛生当局や地域の保健施設を連携の中心拠点としていく必要があります。現在、世界各国において、新型コロナウイルス感染症対応が公衆衛生の中心課題となっている状況においても、女性の社会進出と養育者の多様化という長期課題に対応するための政策努力は不可欠です。女性の社会進出への対応策として、地域保健、産業保健、学校保健の手法を統合するという本事業のモデルは、今後も長期的なインパクトをもたらし得るものと期待されます。

    (写真:郡病院での学校と保健施設との連携調査)

    今後UNU-IASは、これら二件のプロジェクトから得られたネットワークと成果をもとに、ポリシーブリーフの発刊や、関連する国際会議に政策提言を行っていく等の連携を進めていく予定です。

    【審査委員会による講評の要旨】
    ダウンロードは、こちら

    (関連URL)
    ◎ GGS第3期プロジェクト実施の開始
    http://ias.unu.edu/jp/news/announcements/ggs-3rd-term.html
    ◎ GGS第3期中間報告会の開催
    http://ias.unu.edu/jp/news/news/meeting-reviews-progress-of-research-under-grant-for-global-sustainability-ggs-third-term.html#info