HLPFサイドイベントにて気候行動とSDGsとのギャップと相乗効果を議論

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  • 2022年7月13日     オンライン


    2022年7月7日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、国連持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム2022(HLPF 2022)にてサイドイベントを共催し、持続可能な開発を前進させながら気候行動を拡大していくための課題と機会について話し合いました。本オンラインイベントは、国連組織、学術界、市民団体などからの登壇者が一堂に会し、様々な視点からこの2つの目標の相乗効果を実現することによって、いかに致命的なギャップを解消していくことができるか、について模索しました。

    専門家たちは、相乗効果やトレードオフ(両立不可能性)、および取り組みの優良事例について知見を共有し、取り組みを成功に導いた要素を特定し、研究と教育の重要な役割を強調しました。本イベントは、2022年7月20〜21日に東京で開催される「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」および2022年9月19日にニューヨークで行われる社会変革教育サミットの開催に向けて貴重な情報提供を行う役割を果たしました。

    開会挨拶で、環境省の小野洋 地球環境審議官は、世界は「ネットゼロ(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)」に向けて著しい速度で変化している、として、日本は2050年までの達成目標を20年先取りし、2030年までに達成しようと努力していたことを強調しました。

    UNU-IASの山口しのぶ所長は、気候変動対策と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた行動を共に加速するためには、より野心的な取り組みと、両目標間の結びつき強化が求められることを強調しました。また、いかにギャップを解消するかについての様々な国際フォーラムでの最新の議論に触れ、相乗効果の促進に向けて複数分野にまたがる専門知識を結びつけるためのパートナーシップの構築を呼びかけました。

    基調講演では、ドイツ開発と持続可能性研究所のガブリエラ・イアコブタ 研究員が、パリ協定とSDGsとの間の相関関係について詳述しました。イアコブタ氏は、SDGsに関する気候変動対策の効果は主に肯定的なものだが、いくつかの重要なトレードオフが考慮されなければならない、と述べました。特に、重要な気候変動対策を含んだギャップは、SDG目標1「貧困をなくそう」 SDG目標4「質の高い教育をみんなに」、SDG目標10「人や国の不平等をなくそう」などの社会的目標に関連していることが示されました。

    国連大学(UNU)欧州事務所副学長である国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)のシェン シャオメン 所長は、様々な次元にまたがるギャップと相乗効果の問題について模索するパネル・ディスカッションにて司会を務めました。国連経済社会局(UN DESA)の高田実 チームリーダーは、現在の軌道に沿っていては、世界は2050年までにネットゼロを達成できないと警告を送り、SDGsに全面的に取り組む国家的な野心を見せてほしい、と呼びかけました。国連気候変動枠組条約 事務局(UNFCCC)のセルゲイ・コノノヴ プログラムコーディネーション・マネージャーは、持続可能な開発のその他の次元を考慮に入れつつ気候行動を加速をするためには、国家および国際レベルでの調整と一貫性が必要であることを強調しました。

    国連大学マーストリヒト技術革新・経済社会研究所(UNU-MERIT)のバーテル・ヴァン・ドゥ・ヴァーレ所長は、学際的で協働的なアプローチの重要性を強調しつつ、研究者は所属の研究機関や仕事を超えて、世界的な優先課題を達成するためコミュニティや地域のステークホルダーたちと共に物事を進めていかなければならないと論じました。ペンシルベニア大学のメリッサ・ブラウン・ゴッダール  環境イノベーション・イニシアティブ シニア・ディレクターは、気候正義教育や都市でのヒートアイランド現象解決に向けた技術開発など、グローバルな課題に関する地域行動について議論しました。ゴッダール氏は、高等教育機関が知識生成者として、社会変革のための解決策開発に重要な役割を果たしてきたことを指摘しました。

    UNU-EHSのエリック・タンボ  アカデミック・オフィサーは、気候行動のためには、経済発展の起爆剤として起業家精神や技術革新、若者の参画が必要とされたことに触れ、異なるグローバル目標への対処を可能にするような環境が重要であることを強調しました。地球環境戦略研究機関(IGES)の赤木純子 北九州アーバンセンター リサーチマネージャーは、政策の統合性と整合性、ステークホルダーの参画、変化への心理的な障壁、という気候行動と持続可能な開発との間の相乗効果を強化するための3つの課題について紹介しました。

    議論を総括して、シェン所長は、気候行動と社会の中のSDGsとの間の、また政策立案と学術界との間および内部における結びつきを強化することの必要性を強調しました。山口所長は、相乗効果を得るためには、分野間の縦割り的な制度を打破することが求められる、と述べ、2021年11月に行われた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でもたらされた将来への期待について語りました。

    本イベントは、UNU-IASの竹本明生プログラムヘッドによって司会進行が行われました。