HLPF サイドイベントにて、2050カーボンニュートラルの達成に向けた公正で包摂的な社会変革について議論

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  • 2021年7月7日     オンライン

    2021年7月6日、UNU-IASは第一線で活躍する専門家を集め、2050年カーボンニュートラルを達成するために必要な社会的・経済的変革と、その変革を公正かつ包摂的に行う方法について議論しました。国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)の一環で行われた、このオンライン・サイドイベントでは、カーボンニュートラルを達成するために鍵となる要件と、アフリカにおける、環境に配慮した移行(グリーン・トランジション)のための機会が確認されました。また、このイベントでは、「誰一人取り残さない (leaving no one behind) 」というSDGsの理念に基づいた変革への道筋と、2030年までの「行動の10年」の期間に目標を達成するための、カーボンニュートラルとSDGsの相乗効果について意見が交わされました。

    ここでの重要なメッセージは、公正な社会変革のためには人々が中心となり、エネルギーと資源への普遍的なアクセスや、イノベーションとテクノロジー、包摂的な人々の関与、社会の移行についての議論への伝統的な価値観の反映、などを通じて公平性を確保してゆく必要がある、ということでした。議論では、生計や仕事、経済的・社会的な付加価値を生み出すための、自然を基盤とするした解決策が持つ可能性に目を向けることの重要性が強調されました。登壇者たちは、政府、民間企業、市民社会によるカーボンニュートラルに向けた取り組みと行動を歓迎し、知識の普及と技術移転を支援するような、多様なパートナーシップの構築を含め、地球規模レベルでの取り組みを呼びかけました。

    このイベントは、国連大学 — サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、環境・人間の安全保障研究所 (UNU-EHS)、アフリカ自然資源研究所 (UNU-INRA)、 国連経済社会局 (UN DESA)、 国連気候変動枠組条約 事務局(UNFCCC) が主催し、180名以上が参加しました。

    プレゼンテーション

    このサイドイベントにて公開されたプレゼンテーションは、上記の 関連ファイルタブからご参照いただけます。

    議論の要点

    このイベントは、UNU-IAS の山口しのぶ所長の開会挨拶から始まりました。山口所長は、世界が直面している複数の課題と、持続可能な開発目標(SDGs)達成と気候危機に向けた取り組みに対して新型コロナウイルス感染症がもたらした深刻な影響についての認識を述べました。また、公正な社会へと移行していくための公平性の役割を認識し、社会や主要な経済セクターにカーボンニュートラルを実現するための変革をもたらすには、すべての関係者たちを巻き込んだ地球規模での取り組みが不可欠であると強調しました。

    笹川博義環境副大臣は、ビデオメッセージの中で、SDGsの普遍性と、各国がこの国際目標を国家戦略に組み込むことの重要性について語りました。笹川副大臣は、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという中期的な目標を掲げ、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル達成に向けた日本の決意を強調しました。また、カーボンニュートラルとSDGsが相乗効果を発揮する機会の創出は、雇用や成長を目指す政策などを通じて、公正な社会への変革につながるだろう、と述べました。

    東京大学の高村ゆかり教授は、基調講演において、バリューチェーン(価値連鎖)における気候変動リスクの意識向上、説明責任と透明性の向上、そして技術革新を通じて、非政府団体、特に民間企業が、脱炭素化の取り組みをリードしていると指摘しました。また、公正な社会への移行を実現するために、産業構造や労働市場構造を変革するための適切な政策や措置の策定、明確な長期計画の実施、移行戦略を分野別計画に統合すること、などを提言しました。同様に、企業が社会変革に備えるとともに、気候変動リスクへのレジリエンス(回復力)をより高めることを支援するような政策を求めました。その上で、オーナーシップと適法手続きを尊重し、包摂的で人権に基づいた社会変革を実現し、適切なセーフティネット政策を提供することが必要不可欠である、と強調しました。

    続いて、国連機関、民間企業、市民団体からの登壇者たちが、シャオメン・シェン国連大学欧州事務所副学長兼環境・人間の安全保障研究所( UNU-EHS )所長が司会を務めたパネルディスカッションに参加しました。パネリストたちは、2つの重要な問い:「社会変革の文脈において、公平性は、それぞれの異なる関係者たちによってどのように解釈・理解されているのか?」、「公正な社会変革のための前提条件は何か?」、に答えるべく議論を展開しました。

    国連経済社会局 (UN DESA)の持続可能なエネルギーチームリーダー高田実博士は、2050年までの炭素のネット・ゼロと2030アジェンダという2つの重要な中間目標地点を達成するためには、公正な社会への移行が不可欠であると強調しました。また、国家的な変革に対しては、明確な計画と明示的な目標・指標が必要であることを強調し、 SDGsを組み込んだ 「国が決定する貢献(NDC)」やエネルギー移行戦略が、公正な社会変革のための出発点となるだろう、と述べました。

    ユスフ・ナセフ国連気候変動枠組条約 事務局(UNFCCC) 適応部ディレクター兼世界適応科学プログラム議長は、気候変動に晒された際に受ける影響や、国家・コミュニティ間とその内部の適応能力のレベル、資源へのアクセスにおける格差という、気候変動への適応が直面する根本的な不公平を強調しました。また、気候変動を緩和するような行動の二律背反や漏出がコストと利益の不公平をもたらす可能性があると指摘しました。世代間の公平性を実現するために、ナセフ博士はすべての関係者たちを巻き込んだ包摂性を確保すること、現地の人々の価値観や知恵を活用すること、先見性のある分析を通じた最先端技術を探索することなどが必要だと訴えました。

    アフリカ自然資源研究所 (UNU-INRA)のファティマ・デントン所長は、アフリカが炭素集約型ではない、他地域とは異なる発展の軌跡を描く可能性を強調しました。デントン所長は、アフリカにおけるグリーン・リカバリーのための社会変革の機会として、環境に配慮したグリーンな産業化を促進するための農業変革、(特にEU 間での)貿易投資、天然資源やレアアースへの投資、適正価格の技術、サービスへの需要が高まる都市人口の増加などを挙げました。また、グリーン・リカバリーには非公式な経済活動分野も対象に含める必要がある、と論じました。公正な社会への移行は、主権および技術を配備する能力と結びついているため、政治経済と政治生態の両側面がともに重要なものとして考慮されなければならない、と語りました。

    UN ECA 技術・気候変動・自然資源管理所長であるジャン=ポール・アダム博士は、気候変動に対処する能力に差があること、アフリカはSDGs13(気候変動に具体的な対策を)と16(平和と公正をすべての人に)に向けての取り組みが順調ではないことを指摘しました。同氏は、再生可能エネルギー、気候変動対応型農業と食料安全保障、自然を基盤とした解決策など、グリーン・リカバリーと公正な社会への移行のために、より良い投資収益をもたらす分野があることを示唆した上で、アフリカにおける社会変革を可能にするためには、民間投資やグリーンボンドなどの金融をグリーン産業の分野に結びつけることが重要である、と述べました。

    経団連の環境安全委員会国際環境戦略ワーキング・グループ座長である手塚宏之氏は、省エネやエネルギー供給の脱炭素化を進めるためには、気候行動をグリーン成長に結びつける必要があると強調しました。経団連のカーボンニュートラルに向けた行動計画の4つの柱:「国内における企業活動からの排出削減」、「他の利益集団との協力」、「貢献の促進」、「革新的技術の開発」について詳述し、この行動計画は、技術革新、普及、実施、金融セクターとの連携を通じて、カーボンニュートラルに向けた企業の行動を加速させることを目的としている、と語りました。また、世界の脱炭素化の取組に対する協力も行っていく、と述べました。

    環境と人を守るエージェンシー CEO であるマイルス・ズル・ムーク氏は、参加者が限定的なことや、資源やグリーンファイナンスへのアクセスの不足、持続可能ではない採取産業などに触れ、カーボンニュートラルの達成と社会変革を実現する際の実践的課題について論じました。また、アフリカは新型コロナウイルス感染症による危機によって深刻な影響を被っており、気候変動が及ぼす影響に対して特に脆弱であることを強調しました。そして、アフリカにおける公正な社会への移行を実現するために、すべての関係者たちがあらゆるレベルの人々に積極的に働きかけることを呼びかけました。

    イベントの総括として、UNU-IASの山口しのぶ所長は、カーボンニュートラルな経済・社会を実現するために、計画が横断的に実践されることの重要性を強調しました。また、地球規模での公正な社会への移行について、これらの変化によって影響を受ける人々を守り、2030アジェンダの原則に忠実であり続けなければ、真の社会変革をもたらすことはできない、と述べました。そのためには、カーボンニュートラルに向けた進行中の様々な関係者たちの取り組みへの機運を高め、その連携を強化するために、私たち全員が一丸となって取り組むことが求められている、と締めくくりました。

  • 手塚宏之氏プレゼンテーション

    (1.2 MB PDF)

    高村ゆかり教授プレゼンテーション

    (4.2 MB PDF)