HLPFサイドイベントで持続可能な回復のためのSATOYAMAイニシアティブの役割について議論

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  • 2022年7月15日

    2022年7月13日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、国連持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム2022(HLPF 2022)のサイドイベントを共催し、SDGsの達成と新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックからの回復におけるSatoyamaイニシアティブの役割について議論しました。登壇者は、気候変動の課題に対する長期的な解決策を生み出し、ウェルビーイング(幸福)を促進するために、自然と調和した関係に基づく統合的なアプローチの必要性を強調しました。

    イベントの冒頭、コンサベーション・インターナショナルのジョン・ブキャナン 副代表兼持続可能な生産担当は、気候変動、生物多様性の喪失、貧困、食糧安全保障、人権問題を対処するのに必要な時間と規模の中で、国際社会は未だ解決策を見い出し、実現できていないと指摘しました。さらに、これらの課題は相互に関連しており、単独で解決しようとしても長期的な解決策を生み出すことはできない、と述べました。

    国連開発計画(UNDP)のアドリアナ・ディヌ 政策・プログラム局長シニア・アドバイザーは、Satoyamaイニシアティブが、社会的な包摂性を持った尊厳のある暮らしと合わせてランドスケープやシースケープに基づく解決策を強化しながら、統合的なレジリエンス(回復力)を促進する実証済みの長期的方策であると強調しました。

    COVID-19パンデミックは人々の生活に大きな影響を与え、経済を減速させました。生物多様性条約事務局 科学・社会・持続可能な未来部門のジヒョン・リー ディレクターは、パンデミックからの健全な回復には、従来のビジネスの在り方から脱却し、持続可能な実践を取り入れる必要があると述べました。地球環境戦略研究機関(IGES)の竹内和彦 理事長は、自然を基盤とした解決法としての生産ランドスケープ・シースケープの回復が、相乗効果を最大化し、トレードオフを最小化しながら、食料安全保障の提供も可能にすると論じました。

    日本国の大岡敏孝 環境副大臣は、ビデオメッセージで、Satoyamaイニシアティブの協力のもとで、日本政府がポスト2020生物多様性枠組(GBF)の実施に従事していくことを改めて表明しました。

    専門家らは、現場での経験と、様々なSDGsを推進しウェルビーイングを向上させるための統合的なランドスケープアプローチの適用から得られた教訓を共有しました。国連開発計画地球環境ファシリティ小規模無償プログラム(UNDP GEF-SGP)の渡辺陽子 グローバル・マネージャーは、Satoyamaイニシアティブの主要プログラムであり、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の維持と再生を目指す地域コミュニティの取り組みを支援する「Satoyamaイニシアティブ推進プログラム (COMDEKS)」 について紹介しました。

    UNDP GEF-SGPガーナ国内コーディネーターのジョージ・オーツィン氏は、COMDEKSによる支援を通じて、コミュニティがウェト地域のランドスケープを再生し、重要な生物多様性地域の保全を行ったガーナでの再生プロジェクトについて発表しました。ダッカ大学開発学部のラッシュド・ティトゥミール 教授兼学部長は、バングラデシュとインドの間に位置するスンダルバンスマングローブ林地域のコミュニティが、COVID-19のロックダウンの間、どのように地域資源の持続可能な管理について学んだかを共有しました。

    UNU-IASの山口しのぶ 所長は、クリーンで、健全で、持続可能な環境は人権であると述べ、Satoyamaイニシアティブの未来に思いを馳せつつ、その焦点が「国連生態系回復の10年」への貢献に当てられていくことを強調しました。

    最後に、地球環境ファシリティ(GEF)のカルロス・マヌエル・ロドリゲス 事務局長が、Satoyamaイニシアティブは哲学的指針をもたらしただけでなく、最も重要なことは、社会を自然と調和した関係に導くためのツールを提供したことであると述べました。