国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)特別イベントにて、COVID-19からの持続的な回復における高等教育の役割に注目

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  • 2021年7月13日     オンライン

    2021年7月7日、国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム特別イベントでは、持続可能な開発を実現し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックからの持続的でレジリエントな(回復力のある)復興をするために、高等教育が果たす役割の重要性が強調されました。UNU-IASをはじめとする高等教育サステイナビリティ・イニシアティブ  (HESI)のメンバーが主催したこのオンラインイベントでは、高等教育部門の主要な関係者が集まり、これらの重要な課題に対応するために教育をどのように再定義することができるかについて議論しました。

    発表や議論を通じて2030アジェンダを達成するために必要な体系的な変化や、SDGs目標4(質の高い教育)の重要性が強調されました。大学は、次世代のリーダーを育成するだけでなく、研究や政策的アジェンダを推進する機関として、重要な役割を果たす必要があることが再認識されました。

    ビデオ録画

    本イベントの録画ビデオをSDGアカデミーのウェブサイトで公開しています。

    HESIパートナーシップ・ビューブック

    HESIパートナーが、2021年7月時点における取組概要をまとめました。

    ディスカッション概要

    開会セッションの司会として、サム・バラット氏(UNEP、青少年・教育・アドボカシー担当チーフ)は、COVID-19によるパンデミックの影響と現状を説明し、SDGsの達成と気候変動への対策には、この10年間の行動が不可欠であることを強調しました。パネリストたちは、高等教育の課題、機会、そして教訓について議論しました。ステファニア・ジャンニーニ氏(ユネスコ教育局次長)は、パンデミックによる、教育的、社会的、経済的な不公平が深まっていることを指摘し、現在の課題に対処するための大学のプログラムが必要であると述べました。2021年5月に開催されたESDに関するユネスコ世界会議で採択された「ESDに関するベルリン宣言」は、あらゆるレベルの学習者が、持続可能な開発のために行動する知識、スキル、価値観を身につけるため、また教育を変革するための計画案となり得るものです。

    ソフィア・エリクソン・ウォーターシュート氏(青少年・教育・エラスムス計画+ディレクター、欧州委員会教育・文化事務局長)は、デジタルや環境に配慮したグリーン・スキルを身につけることが復興には不可欠であると強調しました。フィービー・クンドゥリ氏(アテネ経済商科大学、COVID-19ランセット委員会「グリーン・リカバリー」タスクフォース議長)は、教育と研究を変革し、研究を商業化することによってのみ、持続可能な移行が可能になると説明しました。またSDGsの達成につなげるためには、授業や研究を学際的かつ学問内部でのつながりを持って再構築することが重要であると指摘しました。ケロ・ウチェンドゥ氏(MOCK COP26キャンペーン・コーディネーター/技術者)は、持続可能な開発をカリキュラムに組み込む必要性を強調し、ネット・ゼロ・エミッションの達成など、大学が率先して取り組みを行うよう提言しました。また、意思決定のプロセスに若者をより多く参加させ、教育カリキュラムに若者の意見を反映させることを呼びかけました。

    2つ目のセッションでは、持続可能な開発のための体系的な変化を支援するために、HESIメンバーが推進している、革新的で広く展開可能な、多様な主体によるイニシアチブが紹介されました。UNU-IASの山口しのぶ所長は、国際目標を地域でのこうどう変換するためのESDに関する地域拠点(RCEs)の国際的ネットワークを紹介しました。2015年から2019年まで(ESDに関するグローバル・アクション・プログラム対象期間)に実施されたRCEプロジェクトの大半(54%)は大学が主導しており、地域コミュニティの能力を高める上での大学の重要な役割を示しています。また、SDGs達成に向け、日本の大学の力を結集するためにUNU-IASが立ち上げた新しいイニシアチブ、国連大学SDG大学連携プラットフォーム (SDG-UP)についても紹介しました。このネットワークは、持続可能な開発を大学院のカリキュラムに組み込み、共同研究を促進するために50の大学を結ぶアジア太平洋地域のネットワークであるProSPER.Netとの相乗効果が期待されています。

    HESIの他のメンバーからも、様々なアイデアや取組が発表されました。ティム・カーター氏(セカンド・ネイチャー社長)は、大学の脱炭素化を実現するための方法として、効果的なネットワークデザインが必要であり、組織的なアクターと後援者の両方の存在が必要であると述べました。スザナ・プエルト・ゴンザレス氏(国際労働機関シニア・ユース・エンプロイメント・スペシャリスト)は、若者の地球環境の保全・修復に役立つ仕事への移行を支援するには、そのためグリーン・スキルの向上が必要であると述べました。チャンドリカ・バハドウール氏(SDSN、SDGsアカデミー・ディレクター)は、教育のあらゆるレベルにおけるESDの統合に焦点を当て、(1)幼少期から基礎知識と意識を構築すること、(2)学習内容を統合すること、(3)フォーマルな体系以外でも継続的に生涯学習を行うこと、という3つの重要な要素を指摘しました。

    ビア・ハリソン氏(Teach the Futureボランティア)は、教育現場の変化を振り返り、気候変動に対して多くの学問領域にわたるアプローチが重視されるようになってきたこと、そして個人的な物語が人を惹きつけ、行動につなげる力があることを指摘しました。ラボーデ・ポポーラ氏(イバダン大学森林経済学・持続可能な開発学教授、オスン州立大学副学長、SDSNネットワーク・ナイジェリア議長)は、グリーンな発想を提唱し、大学が知識を共創・共有する方法を模索することを呼びかけました。

    最後に総括として、サム・バラット氏は、大学の役割についてもっと根本的に考える必要があると述べました。フロレンシア・リブリッツィ氏(SDSN、SDGアカデミー、プログラム・パートナーシップ・ヘッド、HESI共同議長)は、持続可能な開発の達成に向けて誰一人取り残さないために、協力し合い、人間的な側面に光を当て、個人やグループのユニークさを活用することの重要性を強調しました。

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    本イベントは、国連経済社会局(DESA)、UNESCO、UN Environment、UN-HABITAT、UNGCのPRME、UNCTAD、UNITAR、持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)の協力のもと、高等教育サステイナビリティ・イニシアティブ(HESI)の一環として開催されました。UNU-IASは、SDGsを実現するために国連と高等教育のネットワークが結集するHESIの創設メンバーです。