国際防災の日 シンポジウム開催

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  • 2018年11月13日     東京

    UNU-IASと国連国際防災戦略事務局(UNISDR)駐日事務所は、10月12日 に国連大学で「国際防災の日シンポジウム : 持続可能な開発目標(SDGs)と防災 ―災害による経済的損失を減らす(仙台防災枠組 ターゲットc)」を開催しました。

    シンポジウムは竹本和彦UNU-IAS所長、松岡由季 国連国際防災戦略事務局(UNISDR)駐日事務所代表による主催者挨拶から始まりました。沖大幹 UNU上級副学長の基調講演「SDGsと災害リスク管理」では、自然ハザードによるインパクトは認識されている一方で、気候変動への対応が不十分であるとする世界経済フォーラムによる「グローバルリスク報告書2018年版」について説明しました。また、災害によるリスクがSDGsのゴール1、11、13の中でどのように位置づけられているかを具体例を挙げながら説明しました。

    続いて二つ目の基調講演として、竹谷公男 国際協力機構(JICA)上席国際協力専門員が、災害による経済損失の削減が2015年に採択された「仙台防災枠組 2015-2030」のターゲットの一つに含まれていることに触れ、「仙台防災枠組」の7つのターゲットと4つの優先行動、また進捗を測るための指標について説明しました。竹谷氏は、災害リスク削減への投資が重要であること、また、地方防災計画作成のための8つの段階を提示し、防災計画策定にあたっては、さらされているリスクの種類、国のキャパシティとレジリエンス(強靭性)のレベルからの観点が重要であると強調しました。

    基調講演に続き、グローバルレベル、国、自治体それぞれの視点から、防災・減災についての発表が行われました。高橋輝 仙台市まちづくり政策局防災環境都市・震災復興室長は、経済的損失削減にも貢献する津波対策や、地域コミュニティーに付加価値を生む復興アプローチの重要性を強調しました。

    リヤンティ・ジャランテ UNU-IASアカデミック・プログラムオフィサーは、洪水や干ばつといった気象関連災害の発生が増加し、被災者が増している一方、地震や津波に代表される地球物理学的な大災害は、一つの災害による経済的損失が最も大きいことを指摘しました。中でもアジアは気候変動と自然災害に対して最も大きな影響を受けている地域であり、災害リスク削減と気候変動への適応のための統合的アプローチが必要であると強調しました。保険へのアクセスを高め、価格的にも入手しやすくし、また最も脆弱なコミュニティを守るため、地域、自治体、そしてミクロレベルでの新たな保険スキームの必要性を訴えました。

    末續野百合 環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性戦略推進室室長補佐は、Eco-DRRのコンセプトを説明し、自然の生態系が有する防災・減災機能を活用することにより、災害リスクを減らすEco-DRRの重要性とともに、人工構造物と組み合わせて防災対策に活かすことの重要性も説明しました。                                                                                                                             
    松岡由季 UNISDR駐日事務所代表がモデレーターを務めたシンポジウムの後半では、JICAの竹谷氏、仙台市の高橋氏に加え、民間セクターからの登壇者(JTB総合研究所 高松正人氏)と、NGOからの登壇者(CWS Japan 小美野剛氏)がパネルディスカッションに参加しました。それぞれの立場から、グローバルツーリズムに災害が与える影響、地方のニーズと状況を反映させた地方防災計画の策定、民間セクターによる投資のための災害リスク考慮の重要性、災害への備えの強化、災害後の経済復興と生活支援、といったテーマについて議論しました。

    最後に松岡代表は、「Resilience for All」(すべての人々のためのレジリエンス)という考え方に基づいた、アントニオ・グテーレス国連事務総長および水鳥真美 国連事務総長特別代表(防災担当)兼UNISDRヘッドによる国際防災の日に寄せるメッセージを改めて引用しつつ、「災害は何十億ドルもの被害をもたらし、最貧国を襲い、貧困を悪化させていることから、開発を持続可能なものとするには、リスク情報を活用し、リスクを考慮した開発を行わなければならないこと、そして、「災害による人的被害や経済的損失を削減することが人々の生活の改善につながる」というメッセージを共有し、シンポジウムを締めくくりました。