2024年11月18日 カリ
2024年10月31日、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)事務局と国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、コロンビア、カリで開催された国連生物多様性条約第16回締約国会議(CBD COP16)にてサイドイベントを共催しました。本イベントでは、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の再興と持続可能な管理を通した自然共生社会実現のための地球規模の取り組みであるIPSIを取り上げました。UNU-IASは、IPSIの事務局を務めています。
渡辺綱男研究員(UNU-IASいしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)所長、IPSI事務局長)が、冒頭の挨拶を行いました。渡辺研究員は、IPSIが約300もの地域におけるケーススタディを蓄積しており、それらがどのように昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の実施に貢献しているか紹介しました。
UNU-IAS西麻衣子研究員は、IPSIが蓄積してきたツールやメカニズムなどの研究成果を紹介しました。主な研究成果には、SEPLSのケーススタディが取りまとめられているSATOYAMA イニシアティブ主題レビュー(SITR)、コミュニティによる社会生態学的レジリエンスの評価、強化を支援する社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)におけるレジリエンス指標に関するツールキットなどが挙げられます。これらは、IPSIメンバーの取り組みを支援、推進してきました。公益財団法人 地球環境戦略研究機関三輪幸司研究員は、SEPLS内の生物多様性、コミュニティのレジリエンスおよび生態系サービスの強化を目指すプロジェクトのための資金協力プログラムであるSATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)について紹介しました。
Chih-You Ken氏(苗栗県サイシャット(賽夏)族先住民林業労働合作社会長、賽夏(サイシャ)族長老)は、持続可能なランドスケープ管理のための地域のイニシアティブとして、森林及自然保育署とサイシャ族との共同プロジェクトを紹介しました。本プロジェクトによる森林の協同管理や森林産業育成を通して、サイシャ族の生活や生態系は向上し絶滅危惧植物の文化的重要性回復にも貢献してきました。Corporación Ambiental y Forestal del Pacífico Andrés Quintero Ange事務局長は、持続可能なコーヒー生産において地域コミュニティを支援するプロジェクトを紹介しました。本プロジェクトは、2025年のSDM基金提供プロジェクトとして選定されています。
パネルディスカッションでは、マルチステークホルダーとの連携強化方法について議論しました。ユース団体、先住民および各国政府からの参加者は、全社会的アプローチと保全と持続可能な暮らしを進めていくためのコミュニティエンパワーメントの重要性を強調しました。生物多様性グローバルユースネットワークChristian Schwarzer共同創設者は、自然との調和的関係に向けた取り組みにおいて、社会のすべてのセクターを巻き込むことの価値を強調しました。Tebtebba Climate and Biodiversity ProgramAbigail Kitmaプログラムスタッフは、フィリピンのIndigenous Peoples’ National Biodiversity Strategy(先住民生物多様性国家戦略)を通した経験を共有しました。環境省河合秀樹室長補佐は、本セッションにおいて多様な視点が提示されたことを高く評価しました。