Natureにて生物多様性、気候危機への対応に向けた「価値観の転換」を訴える

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  • 2023年8月23日

    世界的な環境危機の長期化の要因が、自然の持つ価値の過小評価にあると示した新しい論文が、Natureに掲載されました。これまで人々は、気候変動や文化の醸成など多様な形で私たちの生活に関わりのある自然を大切にしてきました。しかしながら政策には、生物多様性や気候変動との結びつきの弱い経済的利益のみ反映されています。

    本論文は、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)のスニータ・スブラマニアン研究員を含む大規模な国際チームによって執筆されました。論文では、より公正で持続可能な未来を実現するための変革に必要な4つの「価値観中心のアプローチ」を提案しています:

    1. 自然の価値観の多様性を認識する。
    2. 多様な価値観を意思決定に組み込む。
    3. 政策、制度改革を促進する。
    4. 現状の社会規範と目標から持続可能な価値観へ転換するために、部門横断的な支援を行う。

    本論文は、2022年7月に生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES:Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)が、50,000を超える科学的出版物、政策文書、先住民や地域の情報に基づいて発表したバリューアセスメントを元に執筆されました。

    本論文の共著者であり、バリューアセスメント第6章の統括執筆責任者であるUNU-IASのスニータ研究員は、以下のようにコメントしています。「様々なアクターの多様な自然観を取り込むアプローチを取り入れることで、アクターの主体性と責任感が高まることでしょう。本アプローチの実践により社会、環境政策をより効果的、まとまりのある形に実施できるでしょう。さらに社会全体へのアプローチを実現する契機となるかもしれません。また、UNU-IASのSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI) での学びが執筆にも生きました。IPSIに参画している団体から包括的かつ参加型のガバナンスプロセスを通じて、様々な 景観や海景に存在する豊かな生物文化多様性を認識し、活用することが非常に有益であると学びました。」

    ハイライト

      1. 人々と自然との関わりについては社会構造の中で固定化されている価値観だけではなく、調和、配慮、結束、責任、互恵および正義など価値観の裾野を広げ、価値観のバランスを取り戻すことが重要です。
      2. 自然の持つ多様な価値観に目を向け意思決定を行うことは、生物多様性や気候危機に取り組む上で必要な社会的改革の一部です。この変革は汚染の拡大、パンデミックの発生および環境の不公正など他の社会問題とも深く関連しています。
      3. 本研究は、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)とも連携し、人々と自然両方により良い結果をもたらすために、先住民や地域の視点を取り入れた包括的なアプローチを提唱しています。

    本論文は2023年8月9日発行のNature に掲載されています。UNU Collectionsでも閲覧可能です。