東日本大震災からの継続的復興へ~学んだ教訓を振り返る

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  • 2015年3月20日     仙台市

    FGC-WCDRR-Event-2

    第3回国連防災世界会議において、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、災害後の初期対応から復旧・復興への過渡期における諸課題~東日本大震災からの教と題したパネル討論を開催しました。パネリストは、東日本大震災と福島第一原発事故で被災した地域からの例を踏まえ、避難生活、住宅供給、災害医療、緊急雇用、信頼構築、そして、脆弱な立場に置かれている人々のニーズに関わる問題について活発な議論を交わしました。

    モシニャガ アンナ氏(UNU-IAS)は、福島で行った現地調査を基に、原発事故後の当面の対応として下された避難区域や賠償基準の設定などに関する政策判断が復興期においても長期的な影響を及ぼしていると指摘しました。被災者が復興政策の策定に参画できる機会を継続的に提供することこそが、被災者が当事者意識をもって復興に取り組み、そして避難者が自らの状況を打開するための糸口を模索できる環境づくりにつながると強調しました。

    石川永子氏(千葉大学)は住宅供給・地域再生に着目し、行政は「仮設住宅入居→元の居住地への帰還もしくは復興公営住宅入居」という単線的なプロセスを想定していたが、実際は選択肢が個人単位で多様化していることを説明しました。その上で、現在実施されているインフラ復旧といったハード整備だけではなく、生活再建などソフトな面の施策の必要性を説明しました。

    秋富慎司氏(岩手医科大学)は、東日本大震災発生直後の岩手県の対応を話され、医療救護活動には効果的な指令系統、統制そしてコミュニケーションが不可欠だと話しました。災害発生時には情報は断片的なことが多く、また、誤った情報が流れることがあるため、初期対応にあたる関係諸機関の間で情報共有ができるシステムを構築する必要性について述べました。

    立木茂雄氏(同志社大学)は、障害者が震災時に経験した困難が、心身機能の障害によるものではなく、災害によって引き起こされた環境の変化、活動の制限・制約によるものであったことを発表しました。また、宮城県における障害者の死亡率は全体の2倍であったことを例に挙げ、身体障害者の施設入居率がより高い岩手県よりも死亡率が高かった調査結果について触れ、福祉と防災の関連性について言及しました。

    永松伸吾氏(関西大学)は、東日本大震災後に行われた緊急雇用創出事業について述べ、他国で災害時人道支援の一環として展開されている従来のキャッシュ・フォー・ワーク(労働対価による支援)事業と比較しました。収入を得ることで被災者の自己決定力が高まったり、復興を支えたいという感情が満たされたりするなど、さまざまな利点があることを説明しました。その一方で、参加者の多くには扶養家族がいなかった調査結果から、緊急雇用創出事業が被災家庭を支えるのではなく補助的な役割で利用されていた可能性を指摘しました。

    クリストファー・ホブソン氏(早稲田大学/UNU-IAS)は、福島原発事故に関する説明責任の欠如が被災者の間で継続している不信感につながっていると指摘。ホブソン氏は、原発事故を技術的問題としてだけではなく、社会的問題として捉え、復興に取り組むことの大切さを強調しました。

    パネリストの発表の後、原子力発電に関連した制度・法的問題や高齢者の災害時における脆弱性の他、適切な移住の選択肢提供の重要性、避難問題に対する持続可能な解決策について、会場に参集された参加者との間で積極的な討議が行われました。

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    本イベントは、FUKUSHIMAグローバルコミュニケーション事業の活動の一環として実施されました。

  • モシニャガ アンナ発表資料

    Ana-Mosneaga-WCDRR (342.1 KB PDF)

    クリストファー・ホブソン発表資料

    Christopher-Hobson-WCDRR (3.5 MB PDF)