国連ハイレベル政治フォーラム2020報告会において、UNU-IASの貢献が取り上げられる

,

ニュース
  • 2020年10月2日

    山口しのぶUNU-IAS所長は、2020年9月30日に、環境省主催、地球環境戦略研究機関共催にてオンラインで行われた「国連ハイレベル政治フォーラム2020の報告~コロナ禍からの復興とSDGs達成に向けた日本が果たすべき役割~」にパネリストとして登壇しました。

    国連持続可能な開発目標(SDGs)の2030年までの達成を目指す行動の10年(Decade of Action)の開始年である2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大によって、人々の健康だけでなく、経済、社会全体が世界的規模で深刻な影響を被るものとなりました。このCOVID-19の世界的流行からの復興について、国連は各国に対し、SDGsの進展が復興策に組み込まれるべきであると呼びかけを行っています。また、SDGs達成促進のためには、関連する課題に多様な主体が協力して取り組むことで相乗効果が生まれることが指摘されています。これらの課題は、2020年7月にニューヨークで開催された国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF2020)においても中心的論題となりました。HLPFは、国連がSDGsについての議論を行うための主要な対話の場(プラットフォーム)として創設したもので、その主な役割は、SDGsの進捗状況を確認し、評価を行うことです。

    本イベントは、HLPF2020で交わされた議論を総括する場として、国連機関、ビジネス界、学術界、若者、国際メディアからの登壇者を迎えて開催されました。また、今後SDGs推進を道標としながら行うCOVID-19感染拡大からの復興において、日本の政府、各関係者が果たすべき役割や、どのようにその取り組みの相乗効果を高めていけるのかについて考え、関連する日本の先進的な事例が紹介されました。

    笹川博義環境副大臣による開会挨拶に続き、マリア・フランチェスカ・スパトリサーノ国連経済社会局(UNDESA)政策調整・機関間連携担当事務次長補)およびオバイス・サルマド国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局次長がビデオメッセージを寄せ、それぞれCOVID-19からのより良い復興におけるSDGs推進の重要性を強調し、この局面における日本の貢献を評価すると共に今後の先導的役割に寄せる期待を述べました。

    続く講演では、高田実国連経済社会局(UNDESA) チームリーダー(エネルギー)が、HLPF2020の結果および今後の展望を説明しました。近藤智洋環境省地球環境審議官は、COVID-19からの復興を目指して行われている環境省の取り組みを紹介しました。根本かおる国連広報センター(UNIC)所長は、「より良い復興」と共に気候危機対策に取り組むことの重要性を説く国連事務総長からのメッセージを解説しました。リン・ワーグナー国際持続可能開発研究所(IISD)シニア・ディレクターは、COVID-19感染拡大によって引き起こされている状況が、SDGsと関わる課題としてどのように報道されてきたかを概観し、復興のためには重なり合った課題を同時に解決していくことが重要であると述べました。

    「日本の先進取組を交え、SDGsと気候変動・生物多様性・防災の取組とのシナジー向上を探る」と題したパネルディスカッションでは、まず、モデレーターを務める武内和彦地球環境戦略研究機関(IGES)理事長・UNU-IAS上級客員教授がフレーミング・プレゼンテーションとして、COVID-19からの復興に際し、強靭で持続可能な社会の構築を目指す総合的な枠組みの提案を行いました。
    パネリストとして登壇した山口しのぶUNU-IAS所長は、HLPF2020においてUNU-IASが開催・参加した4つのサイドイベントの報告を行うと共に、その経験を生かして、UNU-IASが今後SDGs実現に向けてどのように貢献していくかを述べました。HLPFサイドイベントで、UNU-IASは、SDGsに関連する分野の専門家として、高等教育、生物多様性、レジリエンス(災害等からの回復力)、気候変動の分野における研究成果および、これまでに構築してきている人的および情報面での繋がりに基づく成果を発表しています。山口氏は、上記の複雑に関連しあった課題について、分野を隔てる壁を超えて解決を目指し、その相乗効果を高める必要があると指摘しました。そしてそのためには、各分野で行われている取り組みの持つ社会的な付加価値を可視化することと、トレードオフ(一つの目的を追求するために犠牲を払う行為)の解消が重要であると述べました。また、環境省と連携して、政府が実施する事業について、SDGsの全目標に対してインパクト評価(事業によってもたらされた変化の評価)を行う仕組み作りの検討を開始したことを明らかにしました。このような評価軸は、脱酸素化や生物多様性保全等の取り組みが、広く環境、社会、経済に効果をももたらすことを明示し、各国の経済政策に環境対策が組み込まれることに端緒を開くものと期待されています。
    パネリストとしては他に、長谷川知子日本経済団体連合会常務理事・SDGs本部長、倉石東那持続可能な社会にむけたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)事務局長、小田信也唐津市市民部税務課庶務係係長の各氏が登壇しました。