食料生産・消費、社会的ネットワークと生態系サービスに関するシンポジウムを開催

,

ニュース
  • 2015年2月27日     東京

    sepls-symposium-2015

    国連大学は、2015年2月20日に、社会生態学的生産ランドスケープにおける食料生産・消費、社会的ネットワークと生態系サービスの持続的利用に関する国際シンポジウムを開催しました。これは、国連大学サスティナビリティ高等研究所(UNU-IAS)と土木学会環境システム委員会の共催、また環境省の協力により実施され、約50名の参加がありました。

    「里山・里海」は、学術的には社会生態学的生産ランドスケープといわれ、比較的小さい空間の中に、農地・ため池・二次林などさまざまな環境と人の営みがモザイク状に存在することで、多様な生態系サービスをうみだすと同時に、人間の生活の豊かさに貢献しています。本シンポジウムでは、このような景観の食料生産・消費、社会的ネットワークと生態系サービスの持続的利用に焦点をあて、その現状と今後の課題について発表と議論が行われました。

    まずUNU-IASのアカデミック・プログラム・オフィサーである齊藤修氏からシンポジウムの趣旨説明があり、環境省自然環境局生物多様性地球戦略企画室室長の奥田直久氏からは、これまでの社会生態学的生産ランドスケープにおける研究経緯を踏まえた開会の辞が述べられました。

    次に、ベルギーのハッセルト大学のスティーブン・ファン・パセル助教から、EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy)による補助金、環境への負荷、生物多様性への影響に関する説明がありました。また、持続可能な農業を評価するためのツールに関する事例が紹介され、今後の課題としてより実証的な値に基づく評価や生態系サービスを取り込んだ評価の必要性が示されました。続いて、オランダのワーゲニンゲン大学のディルク・ロエップ助教から、共通農業政策がもたらした負の効果(生産者と消費者の分断など)に対して、農家が新たに社会、経済、生態系をつなぐネットワークを作り、地域に根ざした発展(place-based development)につなげているプロセスについて発表がありました。

    齊藤氏からは、自家生産やいただきもといった、市場を介さない食料消費の実態について、八丈島と能登半島といった日本の事例だけでなく、東南アジアやガーナでの研究事例の紹介が行われました。橋本禅准教授(京都大学)からは、能登半島の生態系サービスの現状と、日本における農業・環境スキームの変遷およびその効果の検証結果を踏まえて、複数のスキームを組み合わせることが効果的な解決につながりうることが発表されました。続いて、香坂玲准教授(金沢大学)からは、能登半島におけるローカルガバナンスと市民参加の事例として、種子の自家採集の動向(市場経済の影響や伝統農法との関わり)、しいたけ生産における保守的な伝統的農法と新たな近代的農法による生産量への影響、農作物のブランディング化の取り組みに関する紹介がありました。

    最後に、パネリストの柴田昌三教授(京都大学)と吉田謙太郎教授(長崎大学)から、発表に関する総括と、今後の研究の展開の可能性、農業政策に関する今後の取り組みが述べられました。

    本シンポジウムで議論された内容は生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)を始めとする国際的な意思決定に貢献すると共に、学術的な論文にまとめられる予定です。

    ****
    本国際シンポジウムは、平成25年度環境省環境研究総合推進費1-1303生態系サービスのシナジーとトレードオフ評価とローカルガバナンスの構築(研究代表:齊藤修・国連大学)の研究の一環として行われました。