2016年1月27日 東京
2016年1月15日(金)、国連大学本部にて、公開シンポジウム「2030持続可能な発展目標:日本と世界の変革へ向けて」が開催されました。本シンポジウムは、環境省環境研究総合推進費戦略課題 S-11 POST2015プロジェクトの活動の一環として開催されました。
主催者挨拶に続き登壇した環境省地球環境審議官の小林正明氏は、2015年が地球規模課題についての2つの大きな合意が形成された年であることを強調しました。昨年は、「2030年アジェンダ」と気候変動に関して合意がなされ、2016年は世界の国々がそれぞれの立場から実施に向けて前進する大きな年になると説明しました。
外務省地球規模課題審議官・大使の尾池厚之氏は、今後の SDGs の課題として、日本の国内体制を作ること、日本の得意な分野や苦手な分野の検討、ステークホルダー間で対話を図ること、民間資金と公的資金を引き出していくことを点をあげました。また、国連における開発という意味において革命的な一年であったとして、SDGsは、これから15年をかけて達成していくものであり、議論や情勢も進展していくと述べました。
S-11プロジェクトリーダーを務める蟹江憲史氏(UNU-IASシニアリサーチフェロー/慶應義塾大学大学院教授)は、「SDGsとは何か?S-11研究の到達点とこれから」と題した基調報告を行いました。そのなかで蟹江氏は、持続可能な開発目標(SDGs)の実施面において、今後の進捗のレビューや、目標を通したガバナンスの仕組みの検討に課題があることを指摘しました。また、過去3年にわたる本プロジェクトの研究成果について、資源・環境制約下において持続可能な発展を実現するための指標・目標のあり方、SDGs実施のためのガバナンスの視点、SDGs達成に向けた国際・国内レベルにおける配分(格差)の問題についても指摘しました。さらに、SDGsを促進していくための今後の日本の課題として、既存の枠組では対応できない分野横断的な問題の解決に向けて「司令塔」を設置すること、また日本のベストプラクティスを国際的に推進することなどをあげました。
参議院議員の武見敬三氏は、人間の安全保障やSDGsにおける健康目標設定の特徴に関する基調講演を行いました。健康目標のとらえ方が“Live Longer”から“Live Better”、寿命から健康寿命という概念に変化・拡大している点、また健康が人間の安全保障の中核を成している点を指摘したうえで、SDGsでは単に保健政策の中での疾患別の垂直的なアプローチにとどまらず、保健システム強化アプローチに基づく目標が設定され、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という考え方が根底にあることが重要であると述べました。エボラ出血熱の流行の例では、保健・医療政策だけでは流行を阻止するには限界があるため(例えば、葬式等遺体の扱いに関する慣習から感染拡大)、コミュニティーレベルにおける包括的な取組の必要性が認識されるべきとだと指摘しました。そして、今後、保健分野を牽引する日本は、健康的な世界とより平和的な社会の構築を目指すうえで世界に貢献することができると述べました。
最後には2つのパネルセッションが行われ、政府・民間企業・一般社会が17の目標に関して、迅速に行動に移ることの重要性、またSDGs関連分野の研究を長年支援してきた日本の実績は今後も国際社会から評価されることが協調されました。SDGs達成へ向けての課題は大きいが、国際社会における日本のリーダーシップを発揮する機会でもあるという意見が共有され、シンポジウムは閉会しました。
当日の登壇者・パネリストの発表資料は、こちらからご覧いただけます。
当日の様子につきましては、POST2015のウェブサイトにて動画をご覧いただけます。