2020年11月12日
2020年11月11日、UNU-IASが設立したSDG大学連携プラットフォーム(SDG–UP)の第2回ワークショップが、オンラインで開催され、25大学から45人が参加しました。今回は、世界大学ランキングのデータプロバイダーであるTimes Higher Education (THE) のチーフ・データ・オフィサーを務めるダンカン・ロス氏をお招きし、世界の大学のSDGsに対する取り組みを評価するインパクトランキングについて講演していただきました。あらかじめ送付されたプラットフォーム参加大学からの質問事項への回答も含め一時間半のセッションとなりました。
ロス氏は、「インパクトランキングの概要」と題し、このランキングの成り立ち、評価手法の仕組み、課題と意義などについて、次のように話しました。
インパクトランキングは、変化の理論に基づき、慎重に調整されたメトリクス(指標)を使用して、1)研究、2)スチュワードシップ(物理的、人的な資源管理)、3)アウトリーチ、4)教育、の4つの側面から包括的でバランスの取れた判断に基づく比較を目指しており、2019年から開始されました。参加の際は、必須項目のSDGs目標17パートナーシップに加えて3つ以上のSDGs目標についての活動データを提出することとしています。提出データを最低4つの目標の活動に絞ったこのシステムは、大学側の負担が軽減されるという点で、多くの大学に公平な参加の機会を与えるとともに、各大学の強みを発揮できるという利点があります。
今年の変更点としては、昨年よりも、より参加しやすく、質問に答えやすくなるように、質問の細分化などの改良がなされました。すべての国に該当しない質問もありますが、高等教育普及のために重要な指標となるものは含まれています。大学が労力と時間をかけて本ランキングに参加する意義について、また、必要とされるデータの入手方法などについて、事前に各大学において議論し、情報共有をすることが重要かと思います。その上で、ランキングに参加することが各大学のメリットとなることを望んでいます。
2020年は世界中から860大学が参加しましたが、そのデータを分析すると、大学の関心は地域のニーズによって非常に異なるということがわかります。ヨーロッパの大学はSDGs目標8(成長・雇用)、目標16(平和)を選択した大学が多く、アジア地域ではSDGs目標1(貧困)、目標2(飢餓)、目標6(水・衛生)などに関心が集まりました。大学が国際機関などと連携し大学の知見と経験を共有することも大変重要です。例えば、日本国内においては比較的深刻ではないSDGs目標1、2、6などについて、世界各国の大学を協力することでSGs達成に大きく貢献することが可能となります。
ロス氏は、このランキングの利点として、好事例を共有するプラットフォームとしての役割について言及しました。世界各国には素晴らしい取り組みが数多くありますが、あまり知られていない事例も多いので、積極的な発信が求められます。そして、参加大学が共に前進することにより、SDGsの達成を目指し、より良い社会の実現へ踏み出すことができるよう願っていると強調し、講演を終えました。
その後、ロス氏への質疑応答を経て前半が終了しました。後半のグループディスカッションでは、アジアにおける言語や文化の多様性への対応、インパクトランキングに参加することの利点、事例の評価方法に対する要望など、様々な意見が交わされました。
最後に、本プラットフォームのアドバイザーである村田俊一関西学院大学総合政策部教授からは、インパクトランキングでは欧米の手法が注目される傾向があるが、途上国の大学との共同研究も大変重要であり、SDGsによるパートナーシップをどのように築いていくかについても強化して欲しいとのコメントがありました。また、SDGsのゴールは必ずしも単独で達成されるものではなく、複数のゴールに関連する活動を包括的に評価するためには学際的なアプローチが必要であると述べました。
SDG大学連携プラットフォームのチェアである山口しのぶは、インパクトランキングは、評価機関が大学を一方的に評価するのではなく、相互の交流を通じて評価法の透明性や各大学の強みを可視化しようとする側面が強いと述べました。また社会(コミュニティ)に対して大学の取り組みを積極的に情報公開したり、取り組みの実績をアピールするためのツールとして有効に利用していけたら良いと強調しました。今回の討論で出された様々な意見ついては、プラットフォームとしてTHEにフィードバックをしていきたいと考えています。また、今後は、参加大学の取り組みを収集した事例集の作成や国内外における情報発信のためのポータルサイトの構築を考えています。多様な大学が集まった本プラットフォームでは、参加大学が活発に意見を出しあって、切磋琢磨していく場として活用していただきたいと考えています。
参加大学 25校(アルファベット順)
愛媛大学
広島大学
北海道大学
国際基督教大学
国際大学
神奈川大学
金沢大学
関西学院大学
慶應義塾大学
北九州市立大学
ノートルダム清心女子大学
奈良教育大学
大阪大学
大阪医科薬科大学
龍谷大学
創価大学
上智大学
東海大学
東京都市大学
東京工業大学
東京外国語大学
東京理科大学
東洋大学
筑波大学
東京大学