セミナーで開発途上国におけるパリ協定の実施について議論

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  • 2022年7月28日     東京

    2022年7月8日、緑の気候基金(GCF)、外務省、国連開発計画(UNDP)、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、GCFのヤニック・グレマレック事務局長および各共催組織からの専門家を迎えて共同でセミナーを開催し、開発途上国におけるパリ協定の実施を促進するための課題と機会について議論しました。また、世界各国における気候変動対策や持続可能な変革に向けて実務者やユースの参画促す能力育成や教育の役割について議論しました。

    開会挨拶で、国連大学(UNU)のデイビッド・マローン学長は、グレマレック事務局長を歓迎し、気候変動対策がグローバルアジェンダにおいて最優先課題となっていること、特に、非常に深刻な気候変動リスクに直面しているにも関わらず対応資源が乏しい開発途上国における対策はことさら重要であることを指摘しました。外務省の赤堀毅 地球規模課題審議官は、温室効果ガス削減や資金支援への取り組みを通じた、パリ協定実施のための日本の貢献について紹介しました。

    グレマレック事務局長は、危機的な気候変動の影響回避に向け気温上昇を1.5℃の⽔準に抑えるために必要な気候資金レベルと実際のレベルとのギャップを強調し、GCFの活動に関する発表を行いました。また、環境に配慮したグリーン・プロジェクトはリターンが小さいという認識を変える必要があることと同時に、資金調達コストの高い開発途上国においては、気候変動にレジリエント(回復力のある)なインフラ構築のリスクを低減する必要があることを指摘しました。リスクをいとわない姿勢や民間金融機関を含む既存団体との連携など、GCFの活動の重要な特徴についても触れ、さらに、日本のパートナーとの連携事業を含むプロジェクトの事例を示しつつ、資金提供のプロセスを紹介しました。

    続いて行われたパネルディスカッションでは、開発途上国においてパリ協定の実施をどのように促進するのかに関する知見が共有されました。赤堀 地球規模課題審議官は、日本政府による資金援助や開発途上国での二国間・多国間協力プロジェクトについて紹介しました。また、人材開発の重要性を指摘し、当該分野におけるUNUのさらなる貢献を希望すると述べました。UNDPの近藤哲生 駐日代表は、GCFの認証機関として開発途上国の国別貢献の実施を支援する、UNDPの活動を紹介しました。UNU-IASの山口しのぶ所長は、UNU-IASの政策志向の研究・教育活動が、分野横断的な専門性の統合を通じて、いかに実践的取り組みを促進しているか、について説明しました。また、大学院学位プログラムにパリ協定専攻を創設するという新たな試みについても紹介しました。

    その後、UNU-IASの竹本明生プログラムヘッドの司会により、開発途上国における気候行動実施への課題と機会、実務者やユースの能力育成に関するギャップとニーズについて議論が行われました。グレマレック事務局長は、気候変動の緩和、適応、資金調達における野心と現実とのギャップ、そしてこれらのギャップの解消に向けて2021年英国グラスゴーでの国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で成された進展について強調しました。赤堀 地球規模課題審議官は、人間中心のアプローチ、パートナーシップ、オーナーシップの尊重を基軸とし、適応策や、政策立案および実施に向けて能力開発を行うことの重要性について強調しました。また、近藤代表は、世界中の若手のための教育の重要性について述べました。山口所長は、気候変動対策と持続可能な開発の問題に相乗効果をもたらすような変革に向け、ステークホルダーたちが協動する機会について言及しました。そして、UNU-IASの大学院学位プログラムにパリ協定専攻を創設する取り組みと、本イニシアチブを進めるためにパートナーらとの連携を強化していくことへの期待について詳述しました。

    本イベントの録画ビデオは、UNU-IASのYouTubeチャンネルよりご視聴いただけます。