2022年11月5日 オンライン
2022年10月26日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、第3回「観光とSDGs – 地域の食と食材から考える『持続可能な開発』」と題したセミナーをオンラインで開催しました。本イベントでは、地域社会と観光客との重要な接点となる「食」の役割に焦点を当て、料理人や料理専門家たちが持続可能な社会の達成に向けた取り組みの中で直面している課題について議論を交わしました。本イベントは、観光とSDGsに関するセミナーシリーズの一環として、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の主催で行われました。
冒頭、UNU-IASの津田祐也 研究員は、飲食サービス業の持続可能な開発に関する国際ガイドラインを紹介し、UNESCO無形文化遺産にも登録されている日本の伝統的な食文化である「和食」のSDGsへの貢献について解説しました。
UNU-IASの小山明子 研究員は、過度な輸入依存や魚類資源の減少、食料廃棄など、日本の「食」の問題点を指摘した上で、地域の「食」を生産・保存・消費する伝統的な知恵と食文化を育んできた、FAO世界農業遺産にも登録されている石川県能登半島の「能登の里山里海」について紹介しました。また、このような昔ながらの食文化を世界に発信するとともに、次世代に伝えていくことの重要性を強調しました。
株式会社こはく取締役で料理研究家の谷口直子氏は、地域の旬の素材の宅配や「食」に関する体験ツアーなどの自社のサービスについて紹介しました。また、地元の市場が季節の恵みや食文化、食糧生産サイクルを肌で感じる機会を提供していることに触れ、食育を通した啓発の重要性に言及しました。
地域の食産業が直面している課題について、レストラン「respiración」の料理長である梅達郎氏は、地元の農家・漁業者の高齢化により食材が手に入り辛くなってきている現状について述べ、後継者不足によって技術の継承が断絶し、食文化が消え去ってしまうことへの危機感を訴えました。そして、料理人も、里山里海の持続可能な管理に参画するために行動を起こさなければならない、と語りました。
「能登イタリアンと発酵食の宿ふらっと」のベンジャミン・フラット氏と船下智香子氏は、「伝統的な知恵の結晶」の一例として、栄養価の高い発酵食が能登地域の重要な伝統食であることを紹介した上で、持続可能な観光の推進において地域社会が地域の食文化の価値を深く認識することの必要性を強調しました。