ランドスケープ・アプローチの生物多様性国家戦略への統合について考察

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  • 2024年5月30日

    2024年5月8日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)目標達成のためのランドスケープ・アプローチの生物多様性国家戦略への統合に関するウェビナーを開催しました。本イベントは、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)との共催で行われました。

    UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員は、ランドスケープ・アプローチの定義を紹介しました。ランドスケープアプローチは、特定の地域における生態学、社会的および経済的背景を考慮し、かつ持続可能性の原則や生物多様性の保全を踏まえ地域の生産活動の管理を行うための総合的な戦略を意味します。また、スニータ研究員はSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)についても取り上げました。IPSIは、ランドスケープ・アプローチや科学、政策および実践のつながりの強化を通して自然共生社会の実現を目指しているグローバルネットワークです。

    IGES André MADERプログラムディレクターは、UNU-IAS とIGESが発行した『ランドスケープ・アプローチを生物多様性国家戦へ取り入れるためのガイド』(英題:Using Landscape Approaches in National Biodiversity Strategy and Action Planning)の概要を説明しました。本書籍は、政策立案者のランドスケープにおける複合的な利用と複合的な利用者についての認識を高め、対立を和らげ、協力的な管理を推進することを目的としています。UNU-IAS、IGES および IPSIは、国連開発計画(UNDP)と国連環境計画(UNEP)の活動に本ガイドを組み入れることを提唱する予定です。UNDPとUNEPは、各国における生物多様性国家戦略の更新を支援し、参加型のワークショップを通して助言を行っています。

    IUCN 東部・南部アフリカ地域事務所Catherine Mungaiシニアプログラムオフィサーは、ケニアにおける生物多様性に関する国家レベルの調整メカニズム構築に向けた取り組みを発表しました。ケニアでは、 政府全体でGBFターゲット14に対応した生物多様性への配慮を政策立案に取り入れています。

    ペルー、サンマルティンにおける統合的ランドスケープファイナンスの仕組みを通した森林減少の根本原因への取り組みでの経験を基に、EcoAgriculture Partners Juan Ramosシニアマネージャーは、生物多様性国家戦略と生物多様性財政プランについての提言を行いました。財政など資源の不足は生物多様性戦略の非効果につながります。これを踏まえ、Juan Ramosシニアマネージャーは、生物多様性における財政と資源の流動化を確実にすることの重要性を強調しました。

    アセアン生物多様性センターCarlo Carlosディレクターは、アセアン生物多様性計画連合について説明しました。本計画は、アセアン加盟国による地域イニシアティブを通じた各国の生物多様性国家戦略の実施支援を目的としています。また、越境保護区管理や能力開発強化などの協力が必要となる地域の共通課題への取り組みに重点を置いています。

    参加者は、経済的なインセンティブを生物多様性に関する政策立案プロセスや生物多様性国家戦略に取り入れることの重要性について話し合いました。農業従事者を例とすると、彼らが持続可能な生産を経済的に行うことが可能であれば、よりランドスケープ・アプローチが選ばれるかもしれません。