「教育の変革サミット」のセッションにおいて気候行動に向けた高等教育の役割を議論

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  • 2022年9月29日     ニューヨーク

    2022年9月17日、国連総会のハイレベル・ウィーク中にニューヨークで開催された「教育の変革サミット(TES)」において、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、セッションを実施しました。気候変動教育と生涯教育における大学の役割に焦点を当て、2050年までのネット・ゼロ・エミッション(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)達成に向けて気候変動教育を主流化するために、社会全体に働きかけるような多様な部門およびステークホルダーとの連携を促進する方法について議論しました。本セッションは、国連大学、スペイン大学省、ブータン教育省、ユネスコ、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局の共催で行われました。

    開会挨拶において、国連大学欧州副学長でもある、国連大学環境・人間の安全保障研究所(UNU-EHS)のシャオメン・シェン所長は、雇用市場に向けて設計された教育システムについて述べ、競争から協調と社会的連帯へと転換・克服していくことの必要性を強調しました。

    ブータン教育省のカルマ・ガライ事務次官は、ブータンのカーボン・ネガティブへの道のりと環境保全が長い間同国の文化の一部であったことに言及しました。また、土地に根ざした学習と価値観が学校のカリキュラムに組み込まれ、ノンフォーマル教育を通じて社会全体の意識向上を図られたこと、これらは、社会全体にとって必要なことと考えられます。

    UNU-IASの山口しのぶ所長は、気候行動のための能力開発が急務であることを強調し、2023年秋に開講予定の本研究所の大学院学位プログラムパリ協定専攻という新たな試みを紹介しました。本プログラムは、すべての持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むための学際的な視点を提供し、講義と実習を組み合わせて行われる予定です。

    スペイン大学省のマルクス・ゴンザレス ・ベイルファス次官は、政府がグローバルな課題に取り組む大学を支援し、理論と実践の両方のアプローチを適用すべきだと述べました。 UNFCCC適応部門のユセフ・ナセフディレクターは、教育が抽出的思考から持続可能な思考への転換を牽引する必要性を強調し、国連システム全体や他のステークホルダーとの長期的な協力が不可欠であることを付け加えました。

    ストックホルム環境研究所アフリカのフィリップ・オサノセンター長は、ケニアにおける大気環境共同研究プロジェクトを紹介し、人々の行動を奨励し、気候政策に影響を与えるために、コミュニティが政策立案者と協力する方法について論じました。RCE南シドニー広域のブリタニー・フェルミューレンRCE ユース・コーディネーターは、持続可能な開発のための教育(ESD)に関する地域の拠点(RCE)のユース・プラットフォームを通じた自身の経験を紹介し、大学の支援を得つつ、若者にプロジェクトのデザインと実施を委ねたことが成功の秘訣であったと説明しました。また、若者が変革の担い手になるためには、若者同士が支援的な環境の中で互いに連携することが必要であると説明しました。ペンシルバニア大学環境イノベーション・イニシアチブのメリッサ・ブラウン・ゴッダール シニアディレクターは、大学内部のあらゆる規律が気候や自然への義務を反映すべきであると述べました。また、より実践的な教育や学習といった高等教育における変革の傾向について述べ、より広範な知識の普及のためには、従来とは異なる意見を取り入れることが重要であると強調しました。

    ディスカッションでは、大学がノンフォーマル教育に参画する方法について議論が交わされました。山口所長は、国連大学が重視する実践のための研究に沿って、様々な大学が直接コミュニティと協働できるよう働きかけているグローバルRCEネットワークの例を紹介しました。ゴッダールシニアディレクターは、ペンシルバニア大学のオンライン・ワークショップが高等教育と初等・中等教育の架け橋となること、気候正義を学習のあらゆる側面に組み込むことを目指していると述べました。

    最後に、ユネスコ教育2030の林川眞紀ディレクターは、社会と高等教育を結びつけ、未来のための新しい環境を共創するために、大学は一般市民に働きかけなければならない、と強調しました。教育と研究に加え、高等教育は社会的な課題に取り組む必要があります。変化には一世代ほどの時間がかかるかもしれないが、気候変動教育には社会全体に向けたアプローチが不可欠であると述べました。