グローバルRCEネットワークによる生物多様性教育プロジェクトについて議論

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  • 2022年6月30日     オンライン

    2022年6月21日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、サステナビリティ・リサーチ&イノベーション会議2022(SRI2022)において革新的な生物多様性教育プロジェクトに焦点を当てたオンライン会議を開催しました。本会議では、ケニア、ナイジェリア、フィリピンの持続可能な開発のための教育(ESD)に関する地域の拠点(RCE)が実施したプロジェクトについて議論が交わされました。RCEからの参加者たちは、現場からの声や、地域を超えてプロジェクトを拡大するためのアイデアを共有しました。

    開会の挨拶で、UNU-IASのナンシー・ファム シニア・コミュニケーション・アソシエイトは、多様なステークホルダーのネットワークを包含するRCEモデルが、生物多様性の教育や保全への取り組みにおいて、コミュニティと協働するためのより連携的かつ効果的なアプローチを提供できることを説明しました。

    UNU-IASのフィリップ・ヴォーター リサーチ・コンサルタントは、ユネスコが主導するESD for 2030の枠組とグローバルRCEネットワークの概要を発表しました。2015年から2019年にかけてのESDに関するグローバル・アクション・プログラム期間中に、30カ国で135のプロジェクトが完了したことに言及しつつ、それらがSDG14(海の豊かさを守ろう)またはSDG15(陸の豊かさを守ろう)のいずれかに焦点を当てていたという、ネットワーク内プロジェクトの傾向分析を紹介しました。大半のプロジェクトは、生物種に焦点を当てたアプローチを採用しており、次いで森林と樹木、伝統的知識、農業などが取り上げられていました。また、4分の3近く(74%)のプロジェクトがコミュニティ・アプローチを採用しており、コミュニティ全体がプロジェクトにアクセス可能かつ地域を巻き込んだ関与を行うことが重要だ、というメッセージを発していました。

    RCEセブのアンナ・リザ・サンティリャーナ氏は、2013年の台風ヨランダで壊滅的な被害を受けたフィリピン・カディス市の沿岸部における、コミュニティを基盤としたマングローブの再生プロジェクトを紹介しました。フィリピン師範大学ビサヤ校が中心となった本プロジェクトは、マングローブの植林、生存率評価、生物多様性マッピングなどの活動を用いて学生、漁師、地域住民のマングローブ保全に対する意識を高めました。本プロジェクトを通じて、漁師たちはマングローブ保全に関する先住民の知識を共有することができ、教師たちは読書強化や保全プログラムのための指導用教材使用に関する技能を向上しました。

    RCEザリアのアダム・ アーマド氏は、ナイジェリアのザリア地域で、植被の変化により絶滅の危機に瀕している種の回復と保護を目的としたプロジェクトについて発表しました。都市部における土地被覆の変化を5年間にわたって時空間的に分析し、絶滅危惧種の所在地と属性にジオタグ(位置情報)を付けたデータベースを作成しました。また、本プロジェクトでは、種を保護するための政策枠組と戦略を策定し、ステークホルダーのネットワークを拡大しました。本プロジェクトによって、コミュニティが絶滅危惧種の文化的、社会的、歴史的価値を理解すれば、自然資源の保護をより積極的に受け入れることがわかりました。

    RCE 南リフトのブライアン・ワスワラ氏は、ケニアのリフトバレーで、競合する代替土地利用、不十分な廃棄物管理、気候変動と天然資源利用に関する紛争などの課題に取り組むプロジェクトについて説明しました。本プロジェクトでは、保全と実践管理に関する研究とトレーニング、および劣化した草地の回復や持続可能な農業などの地域住民の教育が行われています。市民科学に取り組む若者や、生物多様性のモニタリングや報告のためのアプリ利用とともに、実践的な要素を取り入れた体験学習は重要な焦点です。

    UNU-IASのジョンウィー・パク アカデミック・プログラムオフィサーが主導したディスカッションでは、現在継続中の各プロジェクトがもたらす影響に焦点が当てられました。RCEザリアのプロジェクトは、小中学校やNGOなど、より多くのステークホルダーを巻き込んで拡大しています。23の地方自治体を含む州全体、さらには国内の他のRCEも関心を示しており、ナイジェリア全土にプロジェクトを拡大する機会があります。RCE南リフトは、若者が積極的に植林に参加できるよう、学校に苗木を供給する提言を作成しました。また、政策設計や、農業、野生生物保護、持続可能な観光、生態系管理をESDカリキュラムに組み込むことにも取り組んでいます。アンナ・リザ・サンティリャーナ氏は、これらプロジェクトを自らの地域でも再現したいと考えるコミュニティに対して、コミュニティの文化的背景やニーズを理解すること、主体性や持続的な生計手段を確保し、住みやすい環境に貢献することが重要であると強調しました。

    最後にフィリップ・ヴォーター博士は、これらプロジェクトが生態系、生息地、種の保護と回復へのRCEの取り組みの多様性を示しており、沿岸地域、乾燥地、草原など、定型的なカリキュラムでは取り上げられない生態系において実施されていることを指摘しました。

    これらのプロジェクトに関する詳細は、2022年4月に発行された出版物『生物多様性保全に向けたコミュニティの参画:グローバルRCEネットワークによるESDプロジェクト』および紹介ビデオからご覧いただけます。