SATOYAMA保全支援メカニズムの影響を議論

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  • 2024年2月8日

    2024年1月29日、国連大学サステナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム (ISAP2023)のテーマ別会合を共催しました。このセッションは、社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の促進、保全および回復に関するプロジェクトを支援するシードファンディングプログラムであるSATOYAMA保全支援メカニズム(SDM)に焦点を当て行われました。本イベントISAP2023は、公益財団法人 地球環境戦略研究機関 (IGES)との共催で実施されました。

    セッションの冒頭、武内和彦氏(IGES理事長、UNU-IAS客員教授)は、変革を通じて複数の環境問題に取り組むことの緊急性を強調しました。武内氏はネイチャーポジティブな社会に向けて、統合的、包括的かつ地域的な行動を推進するSEPLSアプローチの可能性を強調しました。

    IGES三輪幸司生物多様性と森林政策研究員は、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ (IPSI)と協力してSDMを実施し、20カ国以上で64のプロジェクトを支援したことを紹介しました。

    続いて2022年SDMプロジェクトの実地団体が、プロジェクトの内容と成果を共有しました。ウン ノヨン・オンネション バヤジッド・カーン研究員は、バングラデシュ、シュンドルバンスのマングローブ林における生物多様性の損失に関するプロジェクトについて紹介しました。プロジェクトにて協議、ワークショップを通じ、コミュニティベースのマングローブ再生、統合農業および革新的な農業をどのように促進したか説明しました。生物の種財団マリン・ヨンソンディレクターは、メキシコにおけるトウモロコシの生物多様性と地元の食糧供給を保護する取り組みについて共有しました。本プロジェクトでは地元で生産された種子へのアクセスを確実にし、種子保存に関する伝統的知識を広めるためのマニュアルも発行しました。

    慈心有機農業基金会(TOAF)は、台湾で伝統的な農業の知識がどのように生物多様性を維持、向上しているか説明しました。TOAFアリス・JJ・シュープロジェクト・コーディネーターは、除草剤の使用と草取りの頻度を減らすために在来植物を植えることに加え、伝統的な農法を年長者から若い世代に伝えるコミュニティ・シードバンクと学習農園の重要性を強調しました。

    エチオピア生物多様性研究所デセ・ヤデタ・エデサ研究員は地域社会に食糧と医薬品を提供するエチオピアの絶滅危惧種イェヘブ植物を保護するための、地域ベースの保全と修復に関するプロジェクトの概要を説明しました。プロジェクトでは504ヘクタールが保護区以外の生物多様性の長期的な域内保全に貢献する地域(OECM)に指定され、生態系修復が行われました。17万本以上のイェヘブの苗木が植えられた苗床を作り、8,000世帯以上の家族の生活とウェルビーイングのために貴重な資源を維持できるような支援が行われました。

    パネルディスカッションでは、SEPLS の農業に対するアプローチの総合的かつ包括的な性質について焦点が当てられました。また先住民や地域コミュニティ(IPLCs)が、計画や意思決定のプロセス、生産活動および自然と地域社会のウェルビーイングから外されていることも持続可能性の観点から取り上げられました。

    閉会の挨拶にて環境省鈴木渉生物多様性戦略室長は、SDMは小規模な資金調達メカニズムではありながらも、地域社会との関りから得た貴重な経験や教訓から得るものは大きいと話しました。鈴木室長はこのような現場での活動が、生物多様性の保全と持続可能な利用に大きく貢献していると強調しました。

    プレゼンテーション資料はISAP 2023 公式ウェブサイトこちらよりアクセスいただけます。