国連ESCAPのサイドイベントで気候変動と教育を受ける権利について議論

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  • 2023年5月25日     バンコク

    Photo: UNESCO/Chairat Chongvattanakij

    2023年5月17日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)第79回会合サイドイベントとして「気候変動と教育を受ける権利」をテーマにしたイベントをユネスコと共催しました。本イベントでは、質の高い教育と生涯学習へのアクセスおよび継続性を含め、教育を受ける権利が気候変動の影響によって、いかに脅かされているか、また気候変動対策における教育の重要な役割について議論が交わされました。

    セッションの冒頭、ユネスコの政策・生涯学習システム担当 ボルヘン・チャクロン ディレクターは、今回の議論がどのようにユネスコの取り組み、特にグリーン教育パートナーシップや、意思決定者のためのリソース、ガイドライン、政策支援の開発に反映されているか、について説明しました。

    ユネスコ・バンコクのファリャル・カーン プログラム・スペシャリストは、バングラデシュ、インド、インドネシア、ツバル、ベトナムにおいてユネスコとUNU-IASが共同で行った気候移住と教育を受ける権利に関する地域研究『アジア太平洋地域統合報告書: 気候変動、移住、教育を受ける権利(英題:Asia-Pacific Regional Synthesis: Climate Change, Displacement and the Right to Education)』を紹介しました。

    ユネスコのローラ・ムーメネ 教育を受ける権利プログラム・スペシャリストは、被災者の教育を受ける権利を確保し、彼らを国や地域の制度に組み込むことを目的とした、本報告書が執筆された背景となったグローバルな取り組みについて紹介しました。調査を通じて認識された共通課題として、緊急避難所として学校を使用する場合の学習の中断、気候変動による損失が経済的移住や貧困の悪化につながること、災害対策に一貫性がなく学生たちの学習復帰を遅らせることなどが挙げられました。

    UNU-IASのジョンウィー・パク アカデミック・プログラム・オフィサーは、アジア太平洋地域が気候変動の影響を受けやすいことを強調し、人口の過密、急速な都市化、地理的特性などの要因により、2008年から2020年までの世界の気候変動に関連する移住の80%はこの地域で起きていることを説明しました。また、本調査から得られた次の5つの重要なポイントを強調しました。(1)気候変動に起因する移動に関する複数の複雑なシナリオが、教育へのアクセスにそれぞれ独自の障害をもたらしていること; (2)緊急援助においてデータに基づく優先順位付けが必要であること; (3)国の気候適応計画への教育の統合をさらに強化する必要があること; (4) 大人や青年を含むすべての人に対して生涯学習を確保しなければならないこと; (5) 気候変動による移住者には教師も含まれること。これらの問題に対処するための政策提言には、気候避難民が新しい居住地で経済的・社会的なウェルビーイングを確保できるよう生涯学習の機会を提供すること、国の気候適応計画に教育部門を含めること、気候変動難民を認定する国際協定や条約を制定することなどが挙げられます。

    タイ王国 天然資源・環境省環境保全推進局(DEQP)気候変動協力推進課のチョンラク・ティナグル部長は、同国の気候変動マスタープラン2015-2050および、同プランの適応、緩和、能力開発へのアプローチについて強調しました。タイ国際移住機関のアニンディヤ・ダッタ 移住環境と気候変動プロジェクト・オフィサーは、気候変動と人間の移住の関連性、タイにおける教育の状況について概説しました。また、移動が必要な人々、すでに移動中の人々、移動しない、つまりおそらくは移動できない人々を支援するために、包括的なアプローチが必要であることを強調しました。

    パク博士は、2022年9月に開催された国連の「教育の変革サミット(TES)」の後、グローバルなイニシアチブとして発足した、あらゆる学習者が気候変動に備えることを可能にするべく取り組む加盟国、組織、機関のオープンで包括的なコミュニティである「グリーン教育パートナーシップ」について紹介しました。ユネスコ・バンコクの萬理加 執行室長兼地域プログラム・コーディネーターは、本パートナーシップが、以下の3つの実施強化を目指すと説明しました: (1)より良い連携と協働の促進 (2)ナレッジ・マネジメントと研究の改善 (3)アドボカシーとコミュニケーション、進捗状況把握の強化。

    教育グローバル・パートナーシップのアドボカシー&パートナーシップ専門家であるディーパリ・グプタ氏は、危機的状況下でも教育を守り、質が高く、適切で、公平な教育を推進することを目的とした、気候変動対応型の教育システムについて述べました。教育は、スキル、行動、価値観、態度を形成する上で重要な役割を果たすため、持続可能性の重要な推進力となり得ます。

    ディスカッションでは、気候変動に関わる学習者のエンパワーメントに対する準備不足と、政策、戦略、予算、プログラム、カリキュラム、教育、学習を整合させる体系的な対応の重要性が取り上げられました。カリキュラムを調整し、教育システムをグリーン化する際には、タイムラインの策定が幅広いステークホルダーを巻き込んだ参加型プロセスとなる必要があります。

    最後に、ユネスコ・バンコクのワン・リビン 所長代理は、気候変動に起因する移住の問題に対応するために、加盟国、国連機関、その他の組織間の協働と相乗効果が重要であると述べました。また、気候変動に対する意識を高めるために重要なスキル、コンピテンシー、価値観、態度を特定することの必要性を強調しました。