2024年5月30日 ナイロビ
2024年5月18日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、ケニアのナイロビにて開催された生物多様性条約(CBD)第26回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA26)にてサイドイベントを共催しました。本イベントでは、生物多様性の保全と持続可能な利用のためランドスケープ・アプローチに向けたマルチステイクホルダーの協力の重要性について議論が展開されました。
冒頭、環境省自然環境局生物多様性戦略推進室鈴木渉室長は、2010年から日本政府とUNU-IASが推進しているSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ (IPSI)について取り上げました。UNU-IAS西麻衣子研究員は、生物多様性と暮らしをを守るためのランドスケープ・アプローチを通した自然資源の持続可能な管理の推進というIPSIのミッションについて説明しました。生物多様性条約事務局Jamal Annagylyjova Forest Biodiversity Officerは、昆明・モントリオール生物多様性枠組の達成に向けて、ランドスケープ・アプローチが社会変革をもたらす可能性を秘めていると言及しました。
本イベントにて、UNU-IASが発行を予定している冊子『ビジネスと生物多様性:社会生態学的生産ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の文脈における相互のつながり』に記載の事例研究が共有されました。また、国連貿易開発会議Lika Sasakiバイオトレード・イニシアティブ・オフィサーは、ベトナムのシャムベンゾインガムについて紹介しました。シャムベンゾインガムは、地域社会と生物多様性を支える芳香性樹脂であり、世界の香水市場でも流通しています。さらにTebtebba(先住民政策提言・教育国際センター)先住民と生物多様性プログラムFlorence Mayocyoc-Daguitan氏は、フィリピンのPidlisan族による農産品加工事業を紹介しました。本事業では、土壌の生物多様性を豊富にする伝統的知識を、農地強化のために利用しています。サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学Emilio R. Díaz-Varela准教授は、スペイン、ガリシア州における持続可能な開発を推進する上で伝統的栗園の果たす重要な役割に関する事例研究を発表しました。栗園が生態学的、経済学的に安定して存続するためには、最新と伝統のバランスの取れた統合的な管理戦略が必要です。
UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員は、UNU-IASが社会生態学的生産ランドスケープ(SEPLS)におけるレジリエンス(回復力)の指標を改定することを発表しました。本指標は、コミュニティが各自で生態学的レジリエンスの評価、計画、戦略立案およびモニタリングを行う上でのツールキットです。本改定は昆明・モントリオール生物多様性枠組に準拠し、地域において生物多様性や持続可能性に関する議論を深めることを目的としています。
ランドスケープ・アプローチについてのパネルディスカッションでは、ジェンダー、ユースおよび中央政府の観点が取り上げられました。生物多様性グローバルユースネットワーク、ウガンダIrene Natukunda氏は、科学的な内容についてユースを含むあらゆる人々の理解を徹底していくことの重要性を強調しました。環境省自然環境局生物多様性戦略推進室河合秀樹室長補佐は、日本におけるランドスケープ・アプローチの実施においてステークホルダーを特定する際の課題を挙げ、包括的な協力の必要性を強調しました。
本イベントはUNU-IAS、IPSI、環境省、生物多様性グローバルユースネットワーク(GYBN)、森林に住む民族のためのプログラム(FPP)による共催で行われました。