生物多様性保全に向けた補助金やインセンティブを議論

, ,

ニュース
  • 2024年7月1日     ナイロビ

    2024年5月23日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、ケニア、ナイロビで開催された生物多様性条約第4回実施補助機関会合のサイドイベントを共催しました。このイベントでは、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)のターゲット18をいかに実施するか議論しました。ターゲット18は、締約国に対し生物多様性に有害なインセンティブや補助金を減らし、その保全と持続可能な利用のために有益なインセンティブを拡大することを求めています。

    イベント冒頭、生物多様性条約事務局蔵本洋介氏は森林減少および生息地劣化につながる農業、インフラストラクチャー、その他環境に有害な活動への資金供与の停止を呼びかけました。

    UNU-IASスニータ・スブラマニアン研究員は、補助金、インセンティブが生物多様性へ及ぼす直接的および間接的影響について話しました。また、UNU-IAS、Yolda Initiativeおよびバイオトレード・イニシアティブが実施した調査の考察について、特に社会生態学的ランドスケープ・シースケープ(SEPLS)の観点から紹介しました。補助金やインセンティブは、生物多様性、生態系の健全性および地域社会の福利に対して正と負どちらの影響を及ぼし得ます。地域におけるステークホルダーは、特に一つの作物を栽培し国家から支援を受けている規模の大きい事業者との競争で苦労することが多くあります。しかしながら、エコツーリズムなど地域ならではの資源や生態系に基づいた地域経済活性化の取り組みも進行しています。Yolda Initiative Executive Director、AMNC Coordinator Engin Yilmaz氏は、ヨーロッパ共通農業政策(CAP)による牧畜の影響に関するケーススタディについて発表しました。Yilmaz氏はヨーロッパのランドスケープ、生物多様性および文化の形成における牧畜の歴史的意義に触れながら、CAPの市場メカニズムと貿易自由化が牧畜システム内での不確実性の増大をもたらし地域の分極化の一因となってきたことを指摘しました。

    パネルディスカッションでは、生物多様性保全の対話におけるステークホルダーの関与とボトムアップアプローチの重要性が強調されました。IFAD Environment and Climate Specialist Clemence Moinier氏は、補助金の対象が特定の産物である場合、生物多様性が損失し当該産物の生産強化による食事の多様性の減少につながることが多いことを示しました。そして、農業セクターにおける補助金の2つの特質について説明しました。国連貿易開発会議バイオトレード・イニシアティブLika Sasakiオフィサーは、補助金による影響を判断することの難しさについて述べました。さらに、有害な補助金は、乱獲や環境を破壊する活動を助長するものと定義づけました。有益な補助金については、保全、持続可能な資源利用および包摂的な地域社会実現を支援するものであると紹介しました。国連環境計画、Environmental Policy Unit Balakrishna Pisupatiヘッドは、補助金についての議論はボトムアップアプローチにより地域の持つ諸問題に沿って進められるべきであると強調しました。

    本サイドイベントは、UNU-IAS、生物多様性条約事務局(SCBD)、Alliance for Mediterranean Nature and Culture(AMNC)、バイオトレード・イニシアティブ(BioTrade Initiative)および国際農業開発基金(IFAD)によって共催されました。