サイドイベントにて気候移住者の学習継続に関する研究成果を発表

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  • 2022年6月9日     バンコク

    2022年6月5日、タイのバンコクで開催された第2回アジア太平洋地域教育大臣会合(APREMC II)において、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)はサイドイベントを共催し、気候移住と教育への権利に関するユネスコとの共同研究の成果を発表しました。本セッションでは、気候移住の傾向や気候移住者への教育の必要性が紹介され、学習の継続性を確保するための政策的措置について議論が行われました。

    本調査は2021年にバングラデシュ、インド、インドネシア、ツバル、ベトナムに焦点を当てて行われ、気候移住者への教育の必要性を理解し、彼らの教育を受ける権利や生涯学習を確保するための政策に情報提供を行う初の試みの一つとなりました。

    セッションの冒頭、ユネスコ・バンコクのファリャル・カーン氏は、アジア太平洋地域における大規模な気候変動に起因する強制的な移住や、それに伴う学校教育と生涯学習の機会への深刻な影響について述べました。また、2022年9月にニューヨークで開催される「教育の変革サミット」において、気候変動と教育を受ける権利に関する課題が政策議論の中心となることに言及しました。

    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)のジョンウィー・パク イノベーションと教育プログラムヘッドにより、以下4点主な研究結果がの発表されました。(i)ゆっくりと事態が進行するため、定住地から逃れられない人々を含め、多様で複雑な移住状況が生み出されている (ii)幼い子どもは緊急援助において優先度が高い(疎外された若者や成人学習者は取り残されている。)(iii) 移住を余儀なくされた場合、教師には優先的な支援が必要である(長期的な教師の不在を避けるため) (iv) 国の気候対策基本計画に教育は含まれていない 。本結果を踏まえ、気候移住者を認識するための国際的な合意や条約を確立する必要性、各国の状況における複合的な脆弱性への的を絞った確実な介入、COVID-19流行時の医療従事者に類するような教師の優先度の向上、などの政策提言が概説されました。

    UNU-IASのフィリップ・ヴォーター コンサルタントは、気候変動により海面上昇のリスクに直面している小島嶼開発途上国に焦点を当てました。また、小島嶼開発途上国において気候移住者の公的なイメージに与えるメディアの影響を強調し、コミュニティの土地とのつながりは、あらゆる移動に影響を受けることを指摘しました。教育へのアクセスの阻害要因には、移住や教育・訓練へのアクセスを阻む就労ビザ制度や、学校インフラに負荷をかける都市化などが挙げられます。ヴォーター博士は、都市におけるレジリエントな計画や資金調達に教育セクターを含めること、教育政策において文化や言語を扱うことの必要性を強調しました。

    ユネスコのチャン・グァンチョル本部教育政策課長は、ユネスコの関連活動を紹介し、教育を受ける権利に関する国際的な法的枠組みを現在のグローバルな課題に適用する際の問題点を指摘しました。ユネスコは、気候移住がもたらす現実的な影響、および教育を受ける権利への増大する影響を理解するために、地域や国レベルで複数の研究を実施してきました。

    議論では、特に都市化が進む小島嶼開発途上国の都市において、教育システムの回復力(レジリエンス)を評価し、構築することの重要性が強調されました。また、将来的な気候移住者の増加に対して国際的な関心を集めることも優先事項として確認されました。

    閉会挨拶で、UNU-IASの山口しのぶ所長は、気候移住がもたらす影響が拡大していることを強調し、喫緊の対策を講じない限り、教育の真の変革は望めないと述べました。アジア太平洋地域は地球上で最も脆弱な地域の一つであり、UNU-IASとユネスコによる調査結果は、気候移住した子どもや若者、大人が気候変動に直面してなお等しく学習を継続できるよう政策対話を促進し、状況に合わせた対策を講じるための重要な一歩となるものです。