グリーン復興とSDGsに貢献するライフスタイルを議論

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  • 2020年10月26日

    UNU-IASは、2020年10月6日に、上智大学、環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)と共に、国連Weeksウェビナー「グリーン復興のためのライフスタイルを考える−ウィズコロナとSDGs−」を開催しました。

    本イベントでは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)からの社会の復興をよりグリーンな形で実現し、SDGs達成の取り組みの加速につなげるため、私たちのライフスタイルからどのような貢献ができるのか、さまざまな立場の登壇者による議論を行いました。

    開会挨拶には、山口しのぶUNU-IAS所長が登壇し、エビデンス(科学的根拠)に基づく政策提言やマルチステークホルダー型のパートナーシップ促進を通じて、SDGsを基本理念に据えたより良い復興に貢献するUNU-IASの活動について言及しました。

    続いて、杉村美紀 上智大学グローバル化推進担当副学長が登壇し、コロナ禍の暮らしの変化や新しい取り組みが柔軟で多様な学びを促すことで、SDGs達成にもつなげられる可能性があると述べました。

    続いて、4名の発表者が、SDGsを中心に据え、COVID-19からのグリーン復興に資する暮らし方を主題として、それぞれの取り組みおよび最新の動向を紹介しました。

    スニータ・スブラマニアンUNU-IAS客員リサーチフェローは、私たちの暮らしがあらゆるものの相互依存関係の中で成り立っていることについて解説し、コロナからのグリーン復興を考える上では、セクター別の解決方法ではなく、多様なセクターを巻き込んだ統合的なアプローチによる解決方法を考えることの重要性を強調しました。さらに、生物多様性の主流化とランドスケープ・アプローチの推進は、より良い復興にもつながると話しました。

    井田徹治 共同通信社編集委員・論説委員(環境・開発・エネルギー問題担当)は、熱帯林の破壊や気候変動・気候危機の進行が人間と野生生物との接触機会を増加させ、動物由来感染症の拡大の原因となっていることを解説し、自然界に対するアプローチを変える必要性があると強調しました。また、グリーン復興を考える上では、目先の改革だけではなく、SDGsでも掲げられている根本的な改革(transformative change)をどれだけ実現するかが鍵になると話しました。

    神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 博士課程後期、ESDプラットフォームWILL RCE兵庫−神戸ユースチームの後藤聡美氏は、持続可能な社会の創成に向けた多層多元的な出会い・つながりの場づくりを推進するWILLの活動について紹介しました。後藤氏は、問題と自分との関係性を示す「当事者性」という考え方について解説し、社会をより持続可能にするライフスタイルの変容は、自分と他者の当事者性の邂逅(偶然の出会い)を通じて、相互に影響を与え合うことで可能になると話し、多層多元的な出会いやつながりの場をつくる活動を実施していると話しました。

    永島徹也 環境省大臣官房総合政策課長は、COVID-19や気候変動など人類が直面する問題について解説し、こうした危機に同時に対応するグリーンな復興を目指すことが重要であると話しました。また、持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素社会、循環経済、分散型社会の3つの移行で社会のリデザイン(再設計)を行うというコンセプトに基づいた環境省の取り組みを紹介しました。さらに、地域レベルでSDGsを実施するためのビジョンである地域循環共生圏の考え方について解説しました。

    後半のセッションでは、冒頭モデレーターを務める井上直己 上智大学大学院地球環境学研究科准教授が、地元の有機野菜の支援を通じた地域循環や協働によるコミュニティの再生に取り組んでいることを紹介しました。パネルディスカッションでは、ライフスタイルの変革を定着させるための方策や、新しい生活様式における課題について様々な意見が交わされました。オンライン・オフラインを組み合わせたハイブリッド型教育を推進する必要性や、長期的に脱プラスチック社会への転換を考えることの重要性、企業としてBusiness as Usualではなく発想を転換し根本的な変革を目指す必要性、消費者として保全につながる適切な選択をすることや、同調圧力を打破し声を上げて行動することの重要性が共有されました。

    最後に、渡辺綱男UNU-IASシニアプログラムコーディネーターが、個々のライフスタイルを見つめ直すことで、自然とのより良い関係を取り戻し、グリーン復興の取り組みが各地で展開されることへの期待を述べシンポジウムを締めくくりました。

    当日の様子は後日、上智大学YouTubeチャンネルにて動画が公開される予定です。