自然災害からの復興とレジリエントなコミュニティの形成を議論

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  • 2025年3月24日     金沢

    Photo: Tomoyo Tanno/UNU-IAS

    2025年3月20日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、2024年の能登半島地震からの復興に関するシンポジウムを共催しました。本シンポジウムは金沢市で開催され、各国からの専門家や能登の代表者が集いました。復興に向けた現在の取り組みや、レジリエントなコミュニティの形成に向けたマルチハザードアプローチを用いた防災について議論が展開されました。

    UNU-IAS山口しのぶ所長と石川県企画振興部北村裕一次長が、冒頭挨拶を行いました。続く基調講演では、石川県立大学柳井清治教授が震災と豪雨により引き起こされた土地の隆起など能登の里山里海の風景の変化について紹介しました。土地に根付く希少種に考慮したランドスケープの回復方法や変化した海岸の地形をどのように防災教育に取り入れていくかなどの観点も提起しました。

    UNFCCC(国連気候変動枠組条約)適応部門のユセフ・ナセフディレクターは、能登の復興に向け社会の結束が果たす役割を強調しました。能登の復興への取り組みの中でも、文化財の保全の優先や移動が難しい高齢者への考慮について高く評価しました。

    ドイツ連邦共和国美術展示館エヴァ・クラウスディレクターは、持続可能なヨーロッパの建築の事例紹介を通じて気候レジリエンスと材料の再利用の重要性を強調しました。また、より生物多様性に寄り添った都市の必要性にも触れました。

    パネルディスカッションでは、 UNU-IAS OUIK 渡辺綱男客員研究員がモデレーターを務めました。議論では、日本、ウクライナおよび米国における災害後の復興に関する事例を取り上げました。専門家や地域の実践家が集い、インフラの再建、生態系への影響、生活基盤の破壊、文化の喪失および人口構造の変化などの復興に向けた社会経済的な課題を乗り越えていくための知見を共有しました。登壇者は、人、自然および持続可能な復興の基盤となる場所とのつながりを最大限に活用し、社会、環境および経済など複合的な観点から復興を推進することの重要性を強調しました。

    国連大学欧州副学長、国連大学環境・人間の安全保障研究所所長シャオメン・シェン氏は閉会の挨拶にて、適応の概念を紹介した上で、希望を持ち続けることが長期的なレジリエンスの構築や災害後の復興に必要であると話しました。

    本シンポジウムは、UNU-IAS、環境省、石川県、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、公益財団法人国連大学協力会(JFUNU)の共催のもと開催されました。また、応用生態工学会日本造園学会、2030生物多様性枠組実現日本会議J-GBF)、経団連自然保護協議会、環境再生保全機構、イオン環境財団、日本景観生態学会、環境研究総合推進費S21、北國新聞、北陸中日新聞が後援しました。