スポーツを通じて、地域でのSDGs達成を考える

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  • 2020年2月19日     東京

    UNU-IASは、環境省、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)とともに、「スポーツを通じたSDGsの達成と持続可能な地域社会の実現に向けて~東京2020オリンピック・パラリンピック大会を機に~」を、2020年2月18日に開催しました。

    本シンポジウムでは、持続可能な開発のための2030アジェンダでも言及されている、スポーツが持続可能な開発目標(SDGs)の達成において担う役割について、議論が行われました。また、事例発表として、東京2020年オリンピック・パラリンピック大会ホストタウンや地域で行われている持続可能な取り組みが紹介されました。

    開会挨拶として、永島徹也 環境省大臣官房総合政策課長は、地域資源を最大限活用し持続可能な社会の構築を目指す地域循環共生圏構想の中に、スポーツを位置付ける可能性について言及しました。

    根本かおる 国連広報センター所長は、本東京大会はSDGsへの取り組みを基本理念において開催される初めての夏期オリンピックであることを指摘し、これを契機にスポーツとSDGsとの関連が将来の大会や国内外に広く継承されることへの期待を述べました。

    梶川三枝 一般社団法人 Sport For Smile 代表理事による基調講演では、「国際的なスポーツとサステイナビリティの動向」と題して、スポーツを通して社会問題を解決しようとする世界各地での試みが紹介されました。国連機関を含む多様な主体によって環境負荷を最小限に留めるスポーツ運営を目指すイニシアティブや、スポーツを通じた気候行動を推進することを目的に、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と国際オリンピック委員会(IOC)が2020年に開催を予定している「スポーツ・ポジティブ・サミット」などの事例が挙げられました。梶川氏は、スポーツを通して持続可能な社会の実現を目指す上での日本の今後の課題として、スポーツビジネス界、企業、NGOの連携強化の必要性を指摘しました。

    続いて、スポーツを通した地域の持続可能な取り組みについて、ホストタウンを含む各自治体から発表が行われました。ホストタウンとは、2020年大会開催に向け、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体を指します。2020年2月時点で389件が登録されています。

    金山昭夫 滋賀県理事(スポーツ担当)からは、琵琶湖やその周辺の豊かな自然を活用して、オリンピックチームに事前合宿の場を提供することを通じて、選手と地元住民との交流が図られている様子が紹介されました。

    石山志保 福井県大野市市長は、名水で知られる大野市において推進中の、水を中心に据えた持続可能な地域づくり事業である「Carrying Water Project」を解説しました。水を通した国際支援によって住民が大野市の水の価値を再認識し地域を誇りに思うようになればとの考えから、大野市が日本ユニセフ協会と協力して2016年から進めている東ティモールへの水支援のほか、水に関する教育普及・研究環境の整備、美味しい水を利用した飲食店の展開、水環境の保全と継承、越前大野名水マラソンの開催といった取り組みが示されました。

    籾田学 宮崎県綾町町長は、2012年に国際連合教育科学文化機関(UNESCO/ユネスコ)によってユネスコエコパークに登録された綾町において進められている町づくりについて、森林の保全を軸に、生物多様性を守りながら有機農業を推進し、自然と人間の共生に配慮した様々な活動を展開していると述べました。スポーツに関連しては、スポーツ合宿の場を提供することが町の活性化につながっていること、またホストタウンとして、ユネスコの世界自然遺産を有するセーシェル共和国と自然環境保全の面で共通点があることから、事後交流により相互の文化や歴史等の理解を深める計画を進めていると話しました。

    永井三岐子 UNU-IAS いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)事務局長は、SDGs達成に向けて金沢市において積極的に進められている活動を紹介しました。産官学連携の枠組みであるSDGsビジネスコンソーシアムの存在、また2019年にUNU-IAS OUIK、金沢市、金沢青年会議所(JC)の協働のもと、IMAGINE KANAZAWAと名付けたSDGs達成を目指すイニシアティブを発足させたことを挙げ、今後、本イニシアティブのもと、金沢の目指す未来像を多様な主体と話し合いながら、目標を共有し、様々な主体をパートナーシップによって繋ぐことで、SDGs達成を目指していきたいと話しました。スポーツの面では、ホストタウンとして交流を持つフランスの水泳チームと、大会後、この繋がりをどのようにビジネス面、学術面での交流に発展させられるかが課題であると指摘しました。さらに、スポーツ関係者とSDGs実践者との交流を深めていくことにより、スポーツを持続可能な実践に繋げていけるとの考えを述べました。

    その後のパネルディスカッションでは、スポーツをSDGsに資する活動として捉える世界的な動向が再確認されました。また、スポーツ振興を地域づくりに生かす方法、イベントを一過性のものとせず、継続的なスポーツ振興に繋げることの必要性、事業を進める際にどのように地元住民の理解を得て合意形成を行うか、ホストタウンにおけるまちづくりにおいて大会後どのような持続可能な方向性を残せるのか、などについて、活発な意見交換が行われました。