国連大学SDG大学連携プラットフォームSDG–UP公開シンポジウム開催

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  • 2023年4月10日     東京&オンライン

    Photo: Yumiko Nozaki

     

    2023年3月29日、国連大学SDG大学連携プラットフォーム(SDG-UP)の公開シンポジウム「SDGs達成への取組みを通じた大学における行動変容を考える」が国連大学本部での会場参加とオンラインにより開催されました。シンポジウムでは、「大学マネジメント」、「SDGカリキュラム」、「大学間等連携」および「大学評価とアカウンタビリティ」の4つの分科会において参加大学が協働で実施してきた取り組みの成果が共有され、日本の大学がより持続可能な未来を創るためにいかに貢献できるか、多様な観点から議論が行われました。

    冒頭、SDG-UPチェアである国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)山口しのぶ所長が開会の挨拶を行い、国際関係の変化に伴う多様な要因がSDGsの達成に影響を与える中、グローバルな人材の創出に関わる大学の役割への期待がさらに高まっていることを指摘しました。そして、今回のシンポジウムにおいて、4分科会のセッションでの成果発表を通して直面する課題を共有し、高等教育に関わる多様なステークホルダーの行動変容を促し、より持続可能な社会の創造と繋がることを期待すると述べました。続いて、北山浩士文部科学省大臣官房国際課長は、文部科学省はUNU-IASと協力し、研究や人材育成への支援を通じて、SDG達成に向け取り組んでいることを説明しました。そして、SDG-UPの参加大学が開発した「国連SDGs入門」が実施されたことを取り上げ、本シンポジウムでの発表と議論が、日本の大学の未来のさらなる発展に繋がることに期待を寄せました。

    4分科会での議論は以下の通りです。
    セッション1:SDGsの実現に貢献する大学経営に向けて(マネジメント層分科会)
    本分科会は、大学がSDGsの達成を通していかに社会に貢献できるかを考える上で、大学の経営陣がどうあるべきか深めてきた議論のまとめを報告しました。2つのパネルから構成され、パネル1では大学の様々な取り組みについて、パネル2では、その取り組みを支える体制作りについて具体的な事例報告が行われ、大学経営のさらなる改善に向けて、経験が共有されました。

    セッション2 大学連携サティフィケート・プログラム「国連SDGs入門」(カリキュラム分科会)
    本分科会は、SDG-UP参加大学の中の12大学が協力して開発したサティフィケート・プログラム「国連SDGs入門」の実施報告を行いました。全SDG-UP参加校向けの共同実施、大学が単独で実施する個別実施および追加コンテンツの開発などにおける、実績と課題について説明しました。そして、今後の運営の中で、分科会の間でも様々な連携を強め多角的な変革を広げることが課題であると強調しました。

    セッション3 大学評価におけるTHEインパクトランキングの意義と課題―世界の大学の取り組みと日本との比較(大学評価・アカウンタビリティ分科会)
    本分科会は、Times Higher Education(THE)などの大学評価を効果的に利用して大学内外の行動変容を促し、将来的な実践につなげるべく議論をしてきたことを紹介しました。まず、THEインパクトランキングの世界の大学の動向について詳細な報告が行われました。そして、今後もインパクトランキングを課題解決のために賢く利用し、世界と地域社会とを繋げられるような取り組みを続けることが重要であると強調しました。

    セッション4 大学連携を通じたSDGsの達成(大学間等連携分科会)
    本分科会は、大学間連携を広げ発展させるために、根本的課題を共有し、多様な切り口を学び合うことが必要であると判断し、SDG-UP参加大学32校を対象にアンケート調査を行ったことを報告しました。キーワードの項目では、人材育成や多様性が多くあがり、「人間」にフォーカスしたプロジェクトを中長期的に強化していくのが望ましいということが共有されました。今後は、収集した情報をデータベース化し、日本の大学の取り組みの傾向や特色についてウェブ等を通じての発信を考えていきたいと強調しました。

    総括
    村田俊一(関西学院大学教授、SDG-UPアドバイザー、元国連開発計画UNDP駐日代表)
    総括として、村田俊一関西学院大学教授(SDG-UPアドバイザー)は、SDGsの達成に向けて、社会、経済、環境およびガバナンスの4つの領域を融合させ既存の組織の垣根を越えた協働を促し、高等教育に関わる人々の行動変容を目指して、この分科会活動を推進してきたことを説明した後に、各分科会の発表についてコメントしました。そして、対面授業とオンライン教育のコンビネーションや、民間企業との連携などを通して日本の大学の行動変容をフォローし調査していくことが2023年度の課題となるだろうと述べました。終わりに、弱者に配慮したSDGsのエッセンスをしっかり身につけた学生を社会に送り出すという責任を大学側は重く受け止め、バランスの取れた人材を育成するという役割を果たしていかなければならないと強調し、シンポジウムを締めくくりました。

    このワークショップの詳細なレポートは、こちらからご覧ください。