上智大学国連Weeksシンポジウムで持続可能な食システムへの転換を議論

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  • 2023年11月1日

    2023年10月23日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は上智大学国連Weeksの一環として開催されたオンラインイベント「持続可能な食システムへ:いかに転換させるか?」に協力機関として参画し、専門的な知見を提供しました。

    冒頭、基調講演で登壇したエリック・ポンシュー元欧州経済社会評議会農業・地域開発と環境担当ユニット長は、EUにおける食料システム全体の脱炭素化に向けた取組である「Farm To Fork戦略」について説明しました。ポンシュー氏は、「Farm To Fork戦略」の実行には、食のバリューチェーンの全てのアクターが利益を享受、食の価値を再定義した上で市民社会も取組に参画することが必要であると述べました。また、EU域内にとどまらず他地域の政策や動向にも目を向け、地域を超え協力を行う重要性を強調しました。

    UNU-IASの竹本明生プログラムヘッドは、世界の食料システムにおける温室効果ガスの排出データの分析をもとに、食料システムのサプライチェーンの各段階の排出内訳は国によって異なることを説明しました。また、米国、EU、ブラジルなどの農業大国と比較して、日本では食料生産後の輸送から廃棄に至る過程での温室効果ガス排出割合が多く、排出量も増加傾向にある点を指摘しました。このような特徴を考慮し、日本は国内の食料システムからの排出だけでなく、食料の輸入先の排出削減を国際協調の下で推進していくための努力が必要であると強調しました。そして、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻、気候変動などの地球規模の危機が食料システムに影響を及ぼしており、脱炭素化だけでなく諸課題を解決する公正な移行アプローチが必要であると述べました。

    パネルディスカッションでは、企業の代表者などが各企業における持続可能な食システムへの転換に向けた取り組みについて紹介しました。また、消費者が環境負荷の少ない商品を選択する行動に結びつくようなマーケティング戦略、輸入食品の生産国における温室効果ガス排出を認識する必要性および代替タンパク市場の可能性などのテーマについて議論が行われました。

    閉会挨拶で登壇したグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの有馬利男代表理事は、持続可能な食システムを実現するにはサプライチェーン全体での取組が重要であり、食システムと気候変動そしてSDGsとの相互関係性を認識することやパートナーシップの重要性を強調しシンポジウムを締めくくりました。